あけましておめでとうございます。
こういう年頭のあいさつも,地域によりまた異なることがあります。皆さんの地域ではどういう言い方でしょうか?
この連載も今回で30回を超えますので,それを機にここで少し復習をします。
第1回で説明した「言語の拡張活用」や「言語の商業的利用」を,一度整理します。
まず,「図1」でその種類を確認してください。
注意すべきところを2点説明します。
「②方言ネーミング」は,方言を「名づけ」に《意識的に》使うものです。
区別すべき例はいくつもあります。そのうちの一つは,郷土料理・郷土菓子など地域の伝統的食品です。方言の名前になっているものが多くあり,ほとんどが,昔から自然にその名になっているもので,「方言ネーミング」ではありません。岩手の「ひっつみ」や,沖縄の「サーターアンダギー」【写真1】などがこの例です。
そうではなく,共通語の名前を付けることも可能なのに,《意識的に》共通語でなく方言で「名づけ」をしたのが,「方言ネーミング」です。飲食店名や,これまでこの連載(第13回他)で紹介した施設名に多くあります。お店のメニューにもあります【写真2】。
「⑥方言看板・ポスター」は,第1回では説明していませんので,新たに加えます。これは,方言による道徳啓発の看板やポスターのたぐいです。道徳啓発ですから非営利的なのですが,言語経済学の対象とするのは2つの理由からです。(1)商業的利用と同様の発想で方言を用いているからと,(2)隠れた経済価値が認められるからです。この連載の第8回と第24回で紹介していますので,確認してみましょう。
但し,文字記載の物体が看板やポスターであっても,お店や観光地の宣伝など営利目的の商業的利用は,「方言メッセージ」です。混乱しないようにしましょう。
復習はここまでです。続けて付け足しをします。
「③方言メッセージ」の《方向》について珍しい例により説明を付け足します。
第1回では,観光客歓迎のことば【写真3】,また,現地の人への誘い文句【写真4】などと説明しました。受け手はいろいろでも,〈発信者は現地の人〉でした。
ところが,【写真5】を見てください。沖縄県那覇市内で撮影しました。「めんそーれ」は沖縄の方言で「いらっしゃい」です。〈発信者は“よそ”の人〉=岐阜県の大学です。受け手が現地の人=沖縄の受験生で,他の多くの方言メッセージとは《方向が逆》になっているのです。
みなさんも,珍しい例を見付けましたら,私たちに教えてください。