今回はお隣韓国の方言グッズ関連情報をお伝えしましょう。韓国語の方言は、【図1】のように、1 西北方言(旧平安道)、2 東北方言(旧咸鏡道)、3 中部方言(京畿道)、4 西南方言(全羅道)、5 東南方言(慶尚道)、6 濟州方言の6つに区画されます。 韓国では1945年の解放以後は国民の円滑な意思疎通のために標準語政策が国家規模で行われました。しかし近年になって、地域方言を守ろうという意識も芽生えました。各地域の方言を保存しようという動きもあり、国家的な事業として地域語調査が行われました。【図2】は、韓国国立国語院で調査謝礼用などに作った大型の方言ハンカチで、韓国の「にら」の方言分布を表しています。全部で4種類作られました。

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(韓国の「にら」の方言分布)】
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ところで、濟州島の方言は、本土の言葉とだいぶ違っていますが、最近濟州方言が話せる人が減ってきました。そこで濟州地域の研究者が中心になって濟州方言を守ろうという運動が始まり、韓国民俗博物館と濟州道が協力関係を結んで、2007年を「濟州民俗文化の年」と制定しました。学術大会、民俗公演などの様々な行事が行われ、 一般人や学生が参加する「濟州方言競演大会」も開かれました。
続いて2008年には全羅北道が選ばれ、「全北民俗文化の年」となりました。同じく競演大会が 井邑(ジョンウプ)で開かれて、一般人や中学生が流行の歌謡曲の歌詞を方言に変えて歌ったり、大学生が演劇を方言でやったり、お話を方言で披露しました。
2009年は「慶北民俗文化の年」で、9月12日に古都慶州で「方言競演大会」が開かれました。【図3】がそのときの方言ハンカチです。官製方言グッズとでもいいましょうか。大会のスローガン「와카노, 와 이카노? (ワカノ、ワイカノ/どうして?どうしたの?)」が書かれています。ソウルの標準語なら「왜 그래, 왜 이러는 거야? (ウェグレ、ウェイロヌンゴヤ?)」です。来年度は忠淸南道が選ばれて、「忠南民俗文化の年」になります。どうぞいらしてください。
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(以上、韓国の知り合いの研究者金順任(きむ すにむ)さんに伝えていただきました。なお韓国の方言グッズについては、第19回 山下暁美さん「お隣の国、韓国の方言事情」でも扱われています。)
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。