東海地方で歓迎を表すもてなしの言葉には、主に動詞の「寄る」「来る」「行く」などの派生した形が使われています。「行く」の例で、「行かにゃ損」(愛知県観光協会)は、もてなしというより、最も端的に行く気を誘う表現といえましょう。またの機会にとり上げますが、人の訪問を受けたときの挨拶で「おあがり」をもとにした「あがらっしゃれ」(山形)もあります。どれもこれも共通語にはない、迫力、説得力が感じられます。
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神奈川、千葉など関東周辺出身の大学生12人に聞いてみました。8つの案内パンフレットをもらったとして、どこへ最も行きたくなるか、上位3位までを選んで、理由を言ってくださいというものです。ただし、質問では地名を省きました。「まだ、尾鷲(おわせ)には行ったことがないから行きたい」という表現以外に起因する答えを避けるためです。
その結果、最も行きたくなるのは、「きてぇな」で、第二位は、「よってりゃぁ~」、第三位は、「おいでんかな」でした。主な理由は、「聞いたことがある表現」「かわいらしい」「やわらかい」「あたたかい」「控え目」でした。小文字の響きがいいという人もいました。「行かにゃ損」は、上位三位には入りませんでしたが、「行かないと損しそうで気になる」という意見がありました。関東地方で耳慣れない表現や、少し押しが強いと感じられる表現は下位でした。
もてなしの方言(東海地方) | |||
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写真1 | よってりゃぁ~みたけ | 可児郡御嵩町 | 岐阜県 |
写真2 | おいでんかな | 郡上市 | |
写真3 | きてみんけな! | 高山市一ノ宮町 | |
写真4 | 岐阜県へおんさい!! | (観光連盟) | |
写真5 | 船に乗って来てぇな | 鳥羽市 | 三重県 |
写真6 | こいまぁ尾鷲へ | 尾鷲市 | |
写真7 | 行かにゃ損 | (観光協会) | 愛知県 |
写真8 | おいでん! とよた | 豊田市 |
ここでは、東海地方に限って8枚の写真をあげましたが、24回(京都)、31回(岩手・沖縄)、32回(岡山・山口・琉球)、34回(滋賀)、36回(岩手・富山)にも関連記事がありますから、参考にしてください。
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。