信州の食と言えば、何と言ってもソバということになるでしょう。現代では、おいしいお米もたくさんとれるのですが、伝統的にはソバや小麦が主に作られてきました。それで、小麦粉を材料にした食品も、さまざまに工夫されてきています。
となれば、当然そこには、方言をあしらった商品も見いだされることになります。乾麺のうどんに「おざんざ」(長野県大町市・株式会社河昌)と命名された一品も、その一例です(写真参照)。
袋の裏面には、製法とともに、命名の由来と特長が次のように記されています。
その昔、信濃地方では「うどん」や「そば」など長い食べもののことを「ざざ」とか「おざんざ」(長長・おさおさ)と呼んでお客様のもてなしなどに好んで用いられていました。おざんざは塩を全く使わず納豆の酵素を用いて練り上げた独自の製法と特に吟味された原料でつくられております。麺のうまみ、のどごしのよさを心ゆくまでお楽しみください。
(確かに、他にはない食感で、ツルツルして喉越しのよい、おいしいうどんです。)
現在では、「ざざ」「おざんざ」の語は、あまり耳にしませんが、うどん・そうめん・ひやむぎなど、ソバのみならず、麺類は全般に当地域で好まれています。
粉を用いた食品では、「おやき」も忘れてはなりません。「おやき」とは、ナスなどの野菜を餡にした小麦粉のまんじゅうとも言うべきものです。知らない方には、「ナスの餃子」と説明したほうが、わかりやすいかもしれません。
もともとの作り方は、小麦粉を練って拳よりもやや小さくした位の固まりにし、その中にナスなどの餡を入れ、いろりの上で乾かし、さらにこれをいろりの灰の中に埋めて焼いたものです。現在は、蒸しあげて作るのが一般的です。とは言え、家庭ごと、お店ごとに、皮や餡に工夫をしており、それぞれに味わいがあります。お店は、専門店もあれば、和菓子店で扱っている場合もあります。
(以前、奈良の吉野に行った際、沿道の土産物店で「おやき」の看板を見つけました。懐かしい気がして近くに寄ってみると、大福餅を焼いたものが売られていて、びっくりした思い出があります。)
なお、長野商工会議所では、現在、経済産業省の補助金を受け、「信州おやき」を全国ブランドにする事業を進めています。
「おやき」のほかにも、「にらせんべい」や「こねつけ」などがあります。簡単に説明しますと、「にらせんべい」(「薄焼き」とも)は、韓国のチヂミとよく似ています。「こねつけ」は、ご飯に小麦粉を入れて練り餅にし、それを焼いて砂糖・味噌などで味をつけたものです。これらは、どちらかというと家庭料理です。
「たこ焼き」「お好み焼き」のような華やかさはありませんが、信州人も「こなもの」が大好きです。