今年のNHK大河ドラマ『天地人』の主人公・直江兼続が仕えた上杉家は,2度の領地替えで,現在の山形県米沢に移りました。直江の有名な「愛」の兜の甲冑も米沢市の上杉神社内に保存されています。
今回は,その米沢での方言の商業的利用の,代表的なものを少し紹介します。
[1]「おしょうしな」。「ありがとうございます」の意で,商店の方言メッセージなど,米沢の街の中に多く使われています【写真1】【写真2】。
語源は「お・笑止・な」です。相手に素晴らしいことをしていただき,「恐縮で笑いなど出ない」という意識からでしょう。「お」は丁寧の接頭辞,「な」は終助詞です。
「笑止」は,一つの語源からいろいろな意味になった例です。新潟や東北では「恥ずかしい」の意で使用され,「ショーシー」「ショシー」「オショシー」「ソースー」その他の語形があります。米沢でもこの意味で「ショーシー」と言います。
江戸時代の京都方言で「ショーシ」は,「気の毒な」「かわいそう」の意味でした。
[2]「そんぴん」。語源は「損貧」で,損をしても貧しくなっても自分の意志を変えない「頑固」の意です。上杉武士の気質を表す語です。焼酎やラーメンに使われています【写真3】。ラーメンでは,米沢は内陸部で海から遠いのに,海産物をトッピングし,「頑固」転じて『へそ曲がり』ということです。
[3]『米沢牛』(高級ブランド牛として有名)のお店2軒【写真4】。
[3-1]「あがやえ」。上杉神社前の焼肉店「伝國」のメッセージで,「召し上がれ」の意です。店名は,第9代藩主上杉鷹山の『伝國の辞』(3ヵ条の藩主心得)が元です。
[3-2]「べこや」。米沢駅前の焼肉店の店名。「べこ」は牛のことで,方言ネーミングの店名です。今年,お店はリニューアルし,ロゴも変わりました。
[4]「あいべ」。施設名の方言ネーミングです。「あいべ」【写真5】は,「(いっしょに)行こう」の意で,名まえ自体が誘いのことばになっています。東北の他地方では,似た語形・意味で「あべ」などと言います。この施設には,「負けてはならぬ……気合いだべ」「よってってくだい」の方言メッセージもあります。
[5]方言みやげ他。米沢方言の,方言のれん,方言手ぬぐいがあります。米沢駅には,方言番付がありました。【写真6】
《謝辞》米沢観光物産協会におかれましては,「おしょうしなガイド」の取材に関して特別のご厚誼を賜りました。ここに記しまして感謝の意を表します。