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第34回 【陸上養殖】りくじょうようしょく

筆者:
2022年6月27日

[意味]

水産物を陸上の施設で養殖すること。

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ここ数年、よく見るなあと思うのが「陸上養殖」。魚種はいろいろありますが、特に多いのがサーモン。国内でサケやマスを養殖した「ご当地サーモン」は100種以上も存在し、なかには〝海なし県〟で養殖されるものもあります。

新聞記事データベース「日経テレコン」で調べたところ、日本経済新聞に「陸上養殖」が初めて登場したのは、1981年9月29日付朝刊地域経済面の「新潟県下でヒラメの陸上養殖が活発化」という記事でした。その後、しばらく年に1桁台で推移していましたが、2014年以降は毎年2桁の出現記事件数となり、養殖技術としても言葉としても定着した感があります。

大規模化ができる海面養殖はコストが抑えられる半面、天候に左右されやすく、ウイルスによる病気の発生や寄生虫の問題などリスクが伴うとされます。こうした外部環境の影響を受けにくい陸上養殖が全国に広がってきました。温泉水を使って養殖した毒のないトラフグ、海洋深層水を活用し育てたサーモン、余った野菜を餌にしたウニ、廃校に設置した水槽で育ったホンカワハギなど、地方発のニュースが紙面を飾ります。大企業の参入も増え、陸上養殖の設備やノウハウなどシステムを一括して提供する企業も出てきました。JR西日本は子会社を通じ、陸上養殖ブランド「PROFISH(プロフィッシュ)」を展開。サバや牡蠣(かき)などの水産物のほか、すしや缶詰など加工食品も扱っています。

日本の漁獲量が年々減少するなか、陸上養殖は食料を安定的に供給していくための役割を担うことになります。技術の進歩でより効率的な生産が可能になれば、場所の制約を受けないだけに、さらなる広がりが出てくるのではないでしょうか。

「陸上養殖」の出現記事件数
*日本経済新聞の記事を調査。2022年は5月まで。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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