[意味]
機械などを、動作可能な状態で保存すること。(大辞林第四版から)
[対義]
静態保存
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「動態保存」を載せる国語辞典は少数派で、主なところでは中型の『大辞泉』(小学館)と『大辞林』(三省堂)で確認できました。収録されたのはどちらも最新版からで、前者が第二版(2012年)、後者が第四版(2019年)となっています。
大辞泉は用例に「蒸気機関車の―」を挙げ、大辞林が語義の補説に「鉄道車両を保存する場合などにいう」と示すとおり、新聞での使用例を見ても「動態保存」は鉄道関係、特に蒸気機関車(SL)を取り上げた記事に多く見られます。
ビジネスデータベースサービス「日経テレコン」で調べたところ、日本経済新聞での「動態保存」の出現記事件数は84件(2022年まで)。機械に関するものが66件と全体の8割近くとなり、そのうち鉄道関係が53件にのぼります。ちなみに確認できる最も古い記事は1979年7月のもので、鉄道ではなく水車を取り上げたもの。機械以外では、古民家や歴史的建造物を利活用するものなどが見られます。機械や建物を「剝製」のように保存するのではなく、動かせる状態にし本来の目的ではなくとも使用し続けるのがポイントといえます。
1980年代は、SLで観光を盛り上げようという地域の動きが地方版の紙面に集中。文化的な遺産でもあるSLを「動態保存」して走らせるとの明るい話題が目立ちました。それが現在、SL存続に黄信号がともっています。ブームの草分け、SLやまぐち号(JR西日本)は運休中。SL銀河(JR東日本)がこの6月をもって運行終了し、SL人吉(JR九州)も2024年3月で営業終了するとの報道がありました。いずれも老朽化、部品調達や技術者の確保が難しくなっていることが理由とされています。
どんなものでも永久に動かし続けるわけにはいかないでしょうが、実にさびしい限りです。
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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。