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第44回【児童手当】じどうてあて

筆者:
2023年4月24日

[意味]

児童の養育にともなう家計負担の軽減を目的に支給する手当。中学校修了までの児童の養育者に支給されるが所得制限がある。(大辞林第四版から)

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政府は3月末、少子化対策の「たたき台」を公表しました。2030年代に入るまでが少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだとし、今後3年間を集中取り組み期間としています。

そのなかで、経済的支援の強化策としてまず挙げられるのが「児童手当」の拡充。中学生以下の子供1人当たり原則1万~1万5000円の支給対象者の所得制限を撤廃するとしています。現在は夫婦と子供2人の場合、世帯主の年収が960万円以上なら1人当たり5000円に減額、年収が1200万円以上なら対象外となりますが、こうした措置をやめて一律に受け取れるようにしています。また、高校生までの支給延長や多子世帯への加算が盛り込まれました。6月の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)までに財源を含めさらに検討が続けられます。

ビジネスデータベースサービス、日経テレコンを使い「児童手当」が2000年以降の日本経済新聞朝夕刊でどのくらいの記事に出現しているか見てみました。グラフの山を見ると、主に選挙の年に増える傾向が見て取れます。子育て世帯を意識した選挙公約に掲げられるからでしょう。

最多の133件だった2005年は郵政選挙と言われた衆院議員選挙が実施されました。その後は減少が続きましたが、2009年に急増。衆院選挙で自民・公明から民主党へ政権交代となった年です。民主党政権は翌2010年に「児童手当」に代わる所得制限のない「子ども手当」を導入したものの、財政難のなか2012年に民主、自民、公明の3党合意で所得制限がある「児童手当」に戻っています。統一地方選のあった今年は再び所得制限撤廃が議論となり、年初からの3カ月間ですでに81件。2005年を上回る勢いです。

1972年に始まり、繰り返される制度変更で子育て世帯を翻弄してきた「児童手当」。少子化対策として必要とされるものであるからこそ、きちんとした財源の確保と制度の安定化への議論がまたれます。

【児童手当】の出現記事件数
2023年は3月31日まで

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。1990年、日本経済新聞社に入社。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書に『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)などがある。日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

毎月最終月曜日更新。