続 10分でわかるカタカナ語

第17回 タスク

2017年7月1日

どういう意味?

「やるべき作業」という意味です。

もう少し詳しく教えて

タスク(task)はもともと英語で、「やるべき作業」を意味します。

この言葉のニュアンスは、類義語と比べることで理解できます。「作業」を意味するカタカナ語には、「ワーク(work)」「ジョブ(job)」「タスク」などがあります。このうちワークは「作業一般」を表す概念(英語では不可算名詞の扱い)。いっぽうジョブやタスクは「具体的なやるべき作業」をさします(英語では可算名詞の扱い)。このうちタスクに限り「課せられたもの」「困難なもの」というニュアンスが伴う場合があります。

どんな時に登場する言葉?

作業や仕事にかかわる場面で登場する言葉です。またコンピューターの分野では「処理の実行単位」という意味でタスクという言葉が登場します。

どんな経緯でこの語を使うように?

大正時代に出版された外来語辞典に掲載されている例もありますが、一般に広まったのは1990年代後半以降のことでした。まずコンピューター用語として使用が広がり、その後、一般的な「作業」の意味でも使われるようになりました。

タスクの使い方を実例で教えて!

タスクを使った表現のいろいろ

次のような表現が可能です。「タスクを始める」「タスクを開始する」「タスクを実行する」「タスクをこなす」「タスクに集中する」「タスクを中断する」「タスクをやめる」「タスクを終える」「タスクを終了する」「タスクを繰り返す」。いずれの場合も「タスク」を「作業」に置き換え可能である点に注目してください。

「タスク管理」

ビジネスマンの中には、自身がこれから行うべき作業・行動を一覧表にまとめて管理する人もいます。これを「タスク管理」と呼びます。近年ではスマートフォンなどで「タスク管理アプリ」や「タスク管理ツール」を活用する人も増えているようです。

コンピューターの「タスク」

コンピューターの分野では「処理の実行単位」をタスクと呼んでいます。しかしながらこの用語は、同じコンピューターの分野でも、技術分野やシステムによって定義が異なる場合やそもそも定義があいまいな場合があるので注意が必要です。

複合語もあります。例えばコンピューター分野での「タスク管理」とは「タスクの実行を制御するための機能」のこと。また「マルチタスク(multi task)」とは「複数のタスクを並行して実行する仕組み」をさします。

お使いのパソコンの基本ソフトが『ウィンドウズ』シリーズである場合は「タスクバー」「タスクトレイ」「タスクマネージャー」などの用語に馴染みがあるかもしれません。ここでいうタスクとは、おおむね「実行中のプログラム」のことをさします。

なお「タスクを実行する」「タスクを中断する」「タスクを終了する」などの表現は、コンピューターの分野でもそのまま利用できます。これらに加えて「タスクを起動する」「タスクを生成する」「タスクを切り替える」など、この分野に固有の表現も存在します。

「タスクフォース」

「特別な目的のため臨時に編成するチーム」をタスクフォース(task force)と呼びます。TF と略す場合もあります。

本来は軍隊用語のひとつ。特別任務を遂行するために、通常の組織とは別に編成する「特別部隊」や「機動部隊」を指します。部隊を意味する「フォース」という語を含むのはこのためです。

転じてビジネスや行政などの分野でも「特別作業班」のことをタスクフォースと呼ぶようになりました。例えば日本政府は2009年に「JAL(日本航空)再生タスクフォース」を、また2010年に「自殺対策タスクフォース」を設置しています。いずれも「緊急かつ困難な課題(企業再生や自殺対策)を解決するために臨時で編成される少人数の組織」をさしています。「タスクチーム」と言う場合もあります。

言い換えたい場合は?

基本的には「作業」「仕事」「処理」「課題」「行動」などの言葉で言い換え可能です。例えばビジネスの文脈で登場する「タスク管理」は「作業管理」「行動管理」と言い換えることができます。

コンピューター分野のタスクは、無理に言い換えをしないほうが無難です。言及しようとする分野でタスクがどのように定義されているのか(いないのか)を確認したうえで、「処理の実行単位」「実行中のプログラム」などの補足を適切に行うのがよいでしょう。

タスクフォースは、軍事的文脈では「特別部隊」、一般的文脈では「緊急対応チーム」などと言い換えることが可能です。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

タスクの理解率 国立国語研究所が2006年にまとめた『「外来語」言い換え提案』によれば、タスクの意味を理解する人は「全世代」「60歳以上」のいずれも25%未満でした。適切な言い換えや認知率の向上が求められるカタカナ語のひとつといえるでしょう。

筆者プロフィール

もり・ひろし & 三省堂編修所

新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

編集部から

「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。

「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。

これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。

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