三省堂辞書の歩み

第14回 新式日英辞典

筆者:
2013年3月13日

新式日英辞典

明治38年(1905)4月19日刊行
新渡戸稲造、高楠順次郎共編/本文1186頁/三五判変形(縦149mm)

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【新式日英辞典】初版(明治38年)

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【本文1ページめ】

明治29年刊行の『和英大辞典』をもとに編集しなおした学生向けの小型和英辞典。『和英大辞典』と同じ形式だが、書名は「和英」とせずに「日英」とした。重要語にはアクセントをほどこし(下記の引用では省略した)、間違えやすい語にはウェブスター式の発音が示されている。

実質的な編集は入江祝衛が担当していた。入江は明治35年に『日本俗語文法論』、翌36年に『独和会話編』を刊行しているが、もともとは英語を勉強して英語教師にもなっていた。その後、英語辞書の出版に専念し、明治40年から大正15年にかけて数冊の刊行がある。

なお、『新式日英辞典』をさらに簡約化した『袖珍新式日英辞典』も明治38年に出版されている。

●最終項目

Zūzūshii, a. presumptuous; impudent; audacious [-dā-].
 ── yatsu, a presumptuous fellow.

●「猫」の項目

Neko(猫), n. ①Cat; Felis domestica. ②“Singing girl.”
 ── ni koban, throwing pearls before a swine; ── wo kaburu, to assume an air of innocence, modesty, or honesty[on-].

●「犬」の項目

Inu(犬), n. A dog.
 ── wo keshikakeru, to set a dog on; ── mo arukeba bō ni ataru, 犬モ歩ケバ棒ニ当ル, [even a dog, if it roams, comes in contact with a stick]=even a trifling profit cannot be realized by sitting idly at home.

◆辞書の本文をご覧になる方は

新式日英辞典:

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筆者プロフィール

境田 稔信 ( さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

編集部から

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
毎月第2水曜日の公開を予定しております。