辞林
明治40年(1907)4月1日刊行
金沢庄三郎編/本文1637頁/四六判(縦187mm)
本書は、普通語、古語、俚語方言、外来語のほか、学術用語も多く収め、見出し語数は約8万2000。明治29年刊行の『帝国大辞典』を2万5000語も上回った。
現代的な言葉を載せる目的で編纂され、専門用語には哲学・仏教・心理学・論理学・教育学・法律・経済・動物学・植物学・生理学・鉱物学・物理学・化学・数学(増補再版で天文学・地理学を追加)の区別を示している。また、『帝国大辞典』と同じく、見出しの上には古語・俚語方言・字音語を表す記号が付けられた。俚語方言を表す「{ 」は、語釈の文頭にも付いている。
見出しは歴史的仮名遣いだが、促音「っ」だけは小書きが使われた。音引き「ー」は「あ」の前に配列したため、「アーチ」~「アール」の後に「ああ」がくる。巻末には「発音索引」「字音索引」があって、歴史的仮名遣いでの引きにくさを助けている。また、四十四年版には「難訓索引」も付いた。
『帝国大辞典』では出典付きの用例を掲載していたのだが、本書では作例がわずかに載っている程度となった。そのかわり、語数が増えただけではなく、語釈も改善されている。編集には、『漢和大字典』(明治36年)に続いて足助直次郎が尽力した。金沢庄三郎は、東京帝国大学で指導下の学生だった金田一京助たちに原稿を書かせていたという。
明治42年(1909)刊行の増補再版は本文の頁数に増減なく、四十四年版(明治44年)では本文が24頁増加した。その後、3段組を4段組に変えた縮刷版を大正7年(1918)に、中形版を大正12年に刊行している。
●最終項目
をんをん[温温](名、副) 「をんぜん」(温然)に同じ。
●「猫」の項目
ねこ[猫](名) ①【動】食肉類中猫科に属する小獣、多く人家に飼養せらる、頭円く尾長し、体軀は狭長にして屈伸自在なり、毛色種々あり、夜間は瞳円大なれども日中には豎針状となる、よく鼠を捕ふ。②{芸者の異称。③{知りて知らぬさまをなすこと。又、其人。④{本性をつゝみかくして平凡をよそほふこと。又、其人。⑤{土製の「アンくわ」の称。(東京地方の方言)。
●「犬」の項目
いぬ[犬](名) ①【動】哺乳類中肉食類に属する獣、世界至る所に家畜として飼養せらる、性怜悧にして、視官は鈍けれど、聴官と嗅官とは最も鋭敏なり。②まはしもの。諜者。
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