日本外来語辞典
大正4年(1915)5月11日刊行
上田万年・高楠順次郎・白鳥庫吉・村上直次郎・金沢庄三郎共編/本文371頁、補遺55頁/四六判(縦186mm)
三省堂による最初の外来語辞典である。当時、外来語の辞典としては棚橋一郎・鈴木誠一著『日用舶来語便覧』(明治45年・1912)と勝屋英造編『外来語辞典』(大正3年)が刊行されていた。いずれも三五判程度の小型(縦150mm前後)で、本文は前者が190頁、後者が314頁だった。
先行の外来語辞典が載せたのは英語を中心とした西洋語だった。『日本外来語辞典』では西洋語ばかりでなく、朝鮮・満洲・モンゴル・マレー・インド・ペルシャといったアジア方面の言葉も少なくない。
編者の5名は東京帝国大学や東京外国語学校の教授などである。序文には小倉進平・金田一京助・前田太郎の協力があったと記されている。また、項目の署名略字には松村任三・宮崎道三郎・中田薫・常磐井尭猷のものもある。この署名は語源などの解説を書いた人のもので、疑義が残る場合に付けられた。なかでも、金田一京助がバリカンの名称について由来を記したエピソードは有名である。
見出しはヘボン式のローマ字表記で、アルファベット順。一般的なカタカナ表記の五十音順にはしなかった。外来語の意味を載せるだけでなく、語の出典や参考文献からの引用を掲載したことからも、学術的な傾向の強さがうかがわれる。
見出しには、今日用いられない語に「†」が付き、同起源の語に「*」が付いた。補遺では、本文の追加として載せた項目の頭に「*」がある。
本書は6800語を掲載し、約7年かけて編纂された。奥付の発行所は「三省堂書店」である。刊行から4か月後に出版社の株式会社三省堂が成立し、書店部門と印刷所は切り離された。
●「バリカン」の項目