地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―

第162回 井上史雄さん: 「ザンギ」のグーグルインサイト全国分布
Nationwide distribution of “zangi” according to Google insights

筆者:
2011年8月6日

ザンギは北海道特有で、「鶏カラ揚げ」のことです。2010年に某ファストフードでザンギバーガーのセールをやっていました【写真】。

【写真 ザンギバーガーののぼり】

【写真】

全国の使われ方を見るには、グーグルインサイトが便利です。下図のように、全国地図が県別で出て、ザンギが北海道に多いことが分かります。また、使われ方の変化も折れ線グラフに出ます。少しずつ増えて、2010年秋に急に増えたのが分かります。

【図 グーグルインサイトでの“ザンギ”の検索結果】
【図 グーグルインサイトでの”ザンギ”の検索結果】(クリックで拡大表示)

グーグルインサイトは方言調査の新手法です。方言差があるか気になることばを検索すると、すぐに地図が出ます。世界地図も作れます。面白い地図が多すぎて、公表の機会が追いつきません。検索で使われたことばのデータなので、よく使われる言い方でないと方言地図が出ないのが難点です。

グーグルインサイトの使い方は、以前に紹介したグーグルマップとほぼ同様です。グーグルマップの使い方は第127回に、活用例は第132137142154157159回に出ています。また以下の論文にも載っています。
井上史雄「Google言語地理学入門 Introduction to Google Linguistic Geography」『明海日本語16』(リンク先はPDF)

筆者プロフィール

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics

井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。

(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

 

  • 井上 史雄(いのうえ・ふみお)

国立国語研究所客員教授。博士(文学)。専門は、社会言語学・方言学。研究テーマは、現代の「新方言」、方言イメージ、言語の市場価値など。
履歴・業績 //www.tufs.ac.jp/ts/personal/inouef/
英語論文 //dictionary.sanseido-publ.co.jp/affil/person/inoue_fumio/ 
「新方言」の唱導とその一連の研究に対して、第13回金田一京助博士記念賞を受賞。著書に『日本語ウォッチング』(岩波新書)『変わる方言 動く標準語』(ちくま新書)、『日本語の値段』(大修館)、『言語楽さんぽ』『計量的方言区画』『社会方言学論考―新方言の基盤』『経済言語学論考 言語・方言・敬語の値打ち』(以上、明治書院)、『辞典〈新しい日本語〉』(共著、東洋書林)などがある。

『日本語ウォッチング』『経済言語学論考  言語・方言・敬語の値打ち』

編集部から

皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。

方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。