(菊武学園タイプライター博物館(2)からつづく)
菊武学園タイプライター博物館には、「Caligraph No.2」も展示されています。ボディに「16257」の刻印があり、この「Caligraph No.2」の製造番号の可能性があります。初期の「Caligraph No.2」(1882年発売)と同じく72キーで、大文字26種類・小文字26種類・数字8種類と、記号12種類[&()”/-£?=:,.]を搭載しているものの、キー配列がいわゆるQWERTYです。その点で、通常の「Caligraph No.2」のキー配列とは全く異なっています。
ただし、「P」が「M」の右横にあり、その点が、一般的なQWERTY配列とは微妙に異なっています。また、記号の中に「£」が含まれていることから、イギリス輸出用のモデルだった可能性があります。
プラテンの下には、72本のタイプバー(活字棒)が円形に配置されています。タイプバーはそれぞれがキーにつながっており、キーを押すと対応するタイプバーが跳ね上がってきて、プラテンの下に置かれた紙の下側に印字がおこなわれます。「Caligraph No.2」は、いわゆるアップストライク式のタイプライターで、プラテン下の印字面がオペレータからは見えません。
「Caligraph No.2」は、1882年の生産開始から1900年頃の生産終了まで、一貫してアメリカン・ライティング・マシン社が製造販売をおこないました。経営者は次々に代わっていったものの、アメリカン・ライティング・マシン社は、「Caligraph No.2」のデザインを、生産開始から生産終了までほとんど変更していません。そのため、「Caligraph No.2」の製造時期の同定は、かなり難しいのが現実です。この「Caligraph No.2」に刻された「16257」が、仮に製造番号だとすると、1885~1886年頃に製造されたモデルの可能性が高いのですが、断定はできません。というのも、「Caligraph No.2」にQWERTY配列を搭載したモデルは、そんな古くまでは遡ることができないので、あるいはリストア時にキー配列を変更した可能性が疑われるのです。