常用漢字新辞典
昭和7年(1932)7月5日刊行
三省堂編輯所編/本文227頁/三五判変形(縦138mm)
本書は、大正12年(1923)刊行の『常用漢字の字引』を元にした改訂版である。前著は常用漢字1962字+常用略字154字=計2116字だったが、常用漢字1858字+略字155字=計2013字になった。今回の常用漢字は、臨時国語調査会による昭和6年6月発表の「常用漢字表(修正)」に基づいている。
本文の漢字の配列は総画数順で、同画数内は『康熙字典』の部首順。巻頭に部首順の「常用漢字の表」を掲載している。巻末には「発音索引」があり、ほかに「部首の順序」「部首の名称」「字音仮名遣一覧」があるのも変わりない。
前著と同様に、音が複数ある場合にのみ「読例」として熟語を載せ、それ以外に熟語は掲載していない。また、各漢字の草書体も載せているが、筆書きのような字形からペン字になった。
大きな変化は、上製本から並製本になったことである。定価は50銭から20銭になり、いっそう購入しやすくなった。
本文では、表記の変更や字義の追加などをしている。例えば「一」の8番目では、「ことばのうへにおいてそのいみをつよめる字」から「ことばの上(ウヘ)においてその意味(イミ)をつよめる字」となった。
また、「乙」に3番目の字義「気(キ)のきいてゐること」が加わった。なお、「気」には略字が使われていて、現行の新字体とは異なる「气+ノ」である。現在、この字体を載せている漢和辞典は、ほとんどない(『新潮日本語漢字辞典』には掲載)。
「丁」では、「一 テイ」の字義の最初に「干(カン)の第四(ダイシ)。ひのと」が加わっている。十干(じっかん)の4番目ということだ。当時は、成績評価などに「甲・乙・丙・丁」が使われていた。
ちなみに、干支(えと)は「十干」(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)と「十二支」(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)の組み合わせによって60通りがある。大正13年(1924)は「甲子」(きのえね)にあたり、阪神甲子園球場が竣工された年だった。最初の「甲」と「子」の組み合わせが再び現れるのは61回目だから、「還暦」とは数え年で61歳のことである。阪神タイガースの初優勝は、甲子園球場ができて62年目の1985年、乙丑(きのとうし)だった。
●最終項目
●「猫」の項目
●「犬」の項目