引き続き、ことばとキャラクタとの結びつき方の話である。
前回は、たとえば「坊っちゃん」ということばが幼児性の強い男性のキャラクタを表し、そのキャラクタのラベルとなっている、といったことを述べた。これは、ことばとキャラクタの第1の結びつき方と呼んだものである(第43回)。話の都合上、今回は第2ではなく、第3の結びつき方について述べる。これは、たとえば自称詞の「わし」は『老人』キャラのことばというように、「ことばがそのことばの発し手のキャラクタを暗に示す」という結びつき方である。
第1の結びつき方と同様、第3の結びつき方も、実はことば以外のものがキャラクタと結びつく際に類似のものが観察される。そのことを理解する上でまず注意しなければならないのは、そもそもことばとは動作だ、ということである。
たとえば自称詞の「わし」とは、まず「わ」と低く発音し、続いて「し」と高く発音して自分のことを指すという一連の動作である。「記号」「表象」などというとなにやらすっかり出来上がったモノのように思われてしまうかもしれないが、ことばがまず第一にこのような動作、コトとして存在しているというのは、考えてみれば当たり前だろう。自称詞の「わし」が『老人』キャラのことばだというのは、まず「わ」と低く発音し、続いて「し」と高く発音して自分のことを指すというその動作の行い手が『老人』キャラだ、ということである。[ことば―キャラクタ]の第3の結びつき方とは、[発話動作―発話動作の行い手]という結びつき方、つまり[動作―動作の行い手]という結びつき方が発話動作に特化したものだったのである。
ここまでくれば、この第3の結びつき方に類似するものがことば以外にも観察されるということはもはや明らかだろう。
たとえば、「片手直立左右振り」という、片肘から先を体の前に直立させて左右に振ってみせる動作を行うのは、基本的に『大人』キャラの否定技である(第32回)。
またたとえば、両肘をついて両手首で「A」字状の形を作ってみせるという「両手肘付きA字合わせ」(第34回)を行うのは、権威をもった『おじさん』キャラである。
さらに一例を加えるなら、「両肘先直立交互叩き」を措いて他にはあるまい。つまり両肘から先を直立させて拳を握り、肘から先を交互に前後に小刻みに動かし、拳の下面(小指側)で相手を軽く叩く、あるいは叩くまねをするという動作である。これは『娘』キャラの「ンもぅ、バカバカバカ」という甘えた抗議の技である。この技をくらった男どもはあわれ、皆、顔をニヤつかせて『娘』の言いなりじゃ。おのおの方、油断めさるな。必殺技と呼ぶにふさわしい、恐るべき技じゃぞ。