今回は、中国・四国地方の「もてなしの方言」をご紹介します。
岡山県では、客をもてなすとき、「おいでんせえ」(いらっしゃい)、「よーおいでんさった」(よく いらっしゃいました)などと言います。「おいでんせえ岡山」というキャッチフレーズもあります。「おいでる」は、「オ+イデル」で、「行く」「来る」「居る」の尊敬語です。「おいでる」(いらっしゃる)から「おいでん」(おいでなさい・来てください)が派生したと考えられます。「おいでませ」(山口県)も同様です。「おいでんされました」(山口県岩国市)は、「おいでる」に「~される」(尊敬語)が二重になった形と考えられます。「~される」は、西日本を中心に分布する形で「先生が来んさった」(いらっしゃった・島根県)などにも使われます。
「おいでんかな」(岐阜県・第39回)、「おいでん!豊田」(愛知県・第39回 ※「おいでんバス」が走っているそうです。)、「おいでなんしょ」(長野県・第44回)、「おいでやす」(京都府・第24回、滋賀県・第49回)、「よぐおでんした」(岩手県・第37回・第41回)などがこのシリーズですでに紹介されています。「おいでんか」(愛媛県・未発見)、「おいでるかえー」(大分県・未発見)があることから、「おいでる」は、本州・四国・九州に広く分布していることがわかります。
ほかに、中国・四国地方には、「来てみんさいやぁ」「来てみい~!!」(広島県)、「きてなぁ」(香川県)、「来なソンソン!」(徳島県)、「早よぉ来んさい」(山口県・※写真省略)があります。
「来てみんさいやぁ」(広島県)の「~(し)んさい」は、「~(し)なさい」の意味で、「はよう、食べんさい」「遊びに来んさい」のように用いられます。
これまで、手元の方言資料をできるだけ多く皆さんにご紹介したいと思って、記事といっしょに1枚ずつ写真を掲載したのですが、ウェブを開くとき、軽量であることが大切であるとの考えから、ちょっと見にくいのですが、集合写真になりました。
もてなしの方言(中国・四国地方) | |||
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写真1 | おいでんせえ | 岡山県 | |
まあ、いっぺん来てみんさいやぁ | 三原市 | 広島県 | |
えっと福山来てみい~!! | 福山市 | ||
お日和もようて、まあようおいでんされました | 岩国市時代工房 | 山口県 | |
おいでませ | |||
写真2 | かがわにきてなぁ | 香川県 | |
見に来なソンソン! | 美馬市 | 徳島県 |
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。