インスタント食品の種類が豊富で、その味も本格的なものが増えている現代の生活。
手間ひまかけずに本物の味わいが楽しめる様子を、ひと言で表現した商品が、今回ご紹介する「ずくいらず」(即席みそ汁)です。
PR用のチラシには、次のような宣伝文が載っています。
器に入れ、お湯をそそぐだけで本格的なみそ汁が味わえると大好評の「ずくいらず」。(【ずく】とは、信州の代表的な方言で「根気」や「やる気」を意味します。)
具材は、とき玉・エリンギ・甘えびの3種。地元の山の幸(信州生まれのエリンギと数種のきのこ)とともに、信州人あこがれの海の幸(甘えび)が選ばれており、飽きのこない選択が可能です。肝心の味噌は、老舗として有名な製造元ご自慢のものが使用され、上品な味わいに仕上がっています。
まさにお味噌屋さんの作ったお味噌汁として、信頼のおける商品です。
ところで、ネーミングに使われた「ずく」ですが、ふだんの会話では、「ずくを出せ[=やる気を出せ]」のように使われることが多く、「ずくなし[=無精者]」と非難されないようにお互いに気づかいをしています。
信州を代表する方言といっていい語ですが、市町村誌の類を見ると、当事者はそれぞれ、違った意味づけをしていることがわかります。
市町村誌に見る「ずくなし」の語釈
①労働をいとう人・骨惜しみ・怠け者
【北信】上水内郡誌・下水内郡誌・信州新町誌・松代町史・浅川村郷土誌など
【東信】北佐久郡志・南佐久郡志・小海町誌・川上村誌など
【中信】小谷村誌・東筑摩/松本市/塩尻市誌・伊那市誌
【南信】南信濃村遠山・大鹿村誌
②寒がり
【北信】長沼村誌(長野市)
③勇気がない
【北信】とよさか誌(松代町)
つねになれ親しんでいる語も、このような意味の広がりがあることを知ると、新鮮に感じられます。