方言をグッズやメッセージに出すとき,たいていは方言を大きく示します。そういうなか,今回は,大かたとは異なる発想からの,小さいものに小さく示す,方言グッズと方言メッセージを紹介します。
一つめは,方言グッズ「方言綿棒」です。株式会社山洋(大阪府富田林市)の製品で,「大阪弁おみくじ」【写真1】と「東北弁」【写真2】です。綿棒1本1本の全部に方言が記載されています。綿棒の長さは7.8cm(軸は5.5cm),軸の直径は2mmです。この小ささから「世界最小」としました。両方とも1筒110本入りです。
1回使い切りで,第51回と第56回で紹介した「方言日用品」の仲間でもあります。
「大阪弁おみくじ」は,42種類の大阪弁の表現が「おみくじ」の吉凶度に合わせてあります。10種類ここで紹介します。42種類全部は,ぜひ現物でご覧ください。
超吉:あんた今日は最高の日やで!/大大吉:調子のりまっせ!いきりまっせ!/大吉:ごっつうええやん!/中吉:おおきに!おおきに!/小吉:こんぐらいが一番やねん/小吉:たのむでしかし!/吉:ぼちぼちでんな~/凶:あきまへんわ!/大凶:えらいこっちゃ!/大大凶:さぶいぼ(鳥肌)たってきた!
「東北弁」は,28種類(青森,岩手,山形,福島:各5,秋田,宮城:各4)の方言の文に県名と共通語訳が付いています。各県から1種類ずつ紹介します。( )内は「軸に書いてある『標準語』」です。
青森:な、どさえぐ?ゆさ(あなたどこへ行くの?お風呂にいってくる)/岩手:てづびんで、めーおじゃっこ飲めじゃ(南部鉄でおいしいお茶はいかがですか?)/秋田:泣ぐごはいねぇが~(泣く子はいないか~〔なまはげ〕)/宮城:歯にとうきび詰まっていずいなや(歯にとうもろこしが詰まって違和感があるなぁ)/山形:あんめぐて、んめさくらんぼ(あまくておいしいさくらんぼ)/福島:めんこい赤べご いんねいがい。(ユラユラかわいい赤べこ欲しいでしょう)
もう一つ方言メッセージで,箸帯(日本料理店で箸を束ね結ぶ紙)に出された「おこしやす」【写真3】です。京料理の店,美濃吉(みのきち)のものです。「おこしやす」は,「いらっしゃいませ」(注)の意味です。箸の幅と比べて考えますと,その小ささが分かり,やはり「世界最小」としました。小さくても,お客様に必ず見てもらえますね。
(注)京都のお店のなかには,迎えのあいさつを,常連客には「おこしやす」,初めての客には「おいでやす」として,区別しているところもあると言われます。
今回紹介した「東北弁綿棒」は,私のゼミの学生が見つけて教えてくれたものです。
皆さんも,小さい方言グッズを見つけましたら,どうぞ,私たちに教えてください。
《謝辞》
株式会社山洋におかれては,製品の提供に特別の便宜を計ってくださいました。深く感謝の意を表します。
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〔補遺〕
第61回アップ後に記録した「みちのくの夏のメッセージ」を付け足します【写真4】。「しゃっけぇ麦茶っこ どうぞ飲んでがんせ」,意味は「冷たい麦茶,どうぞ飲んでください」です。場所は,岩手県の遠野駅です。待合室に置かれた冷水サーバーに大きく書かれています。