名古屋駅構内には、「名古屋うまいもん通り」【写真1】があります。土産店に立ち寄ると、「名古屋でナモ うみゃあ! といえば手羽先だがネェ~」(名古屋でね、おいしいものといえば手羽先だよ)、「じゃがいもベースでカリッとサクサク揚げたてだで いっぺん食べてみゃあ!!」(サクサク揚げたてだから 一度食べてみて!!)とニワトリがまるまる太った手羽を振りあげています【写真2】。その隣に、「どえりゃぁ うめゃぁがやぁ」(とても おいしいよ)【写真3】と、もう一羽のニワトリが自らの肉体美を誇っています。名古屋弁では、連母音(連続する二つの母音)が融合する現象が見られます。「~がやぁ」は、念押し、強意、自己主張の意味とされています。
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ほかに「うみぁーっ手羽」【写真4】というのもあって、愛知県では、「おいしい」という表現の表記に「うみゃあ!」「うめゃぁがやぁ」「うみぁーっ」などバラエティがあり、ニワトリが元気に叫んで“おいしさ”を伝えています。
箸にも「でら うみゃあ亭」(たいへんおいしい亭)【写真5】という例があります。「でら」は、「どえりゃ」の短縮形です。食の王国をうたって「愛知」を食べつくすという意気込みが感じられます。
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みそかつドッグ【写真6】は、名古屋名物の一つですが、大須観音の近くで見つけました。「どえりゃ~うみゃ~! 大人気!」(たいへんおいしい! 大人気!)の貼り紙があります。大須観音では、骨董市が毎月開かれていて、「えーもんみつけてちょー」の垂れ幕が下がり、そこには英語、韓国語、中国語で「歓迎」と書かれています。社会の多言語化を反映しています。
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編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。