宮崎県の北部地域の情報を広く発信しようとしている情報誌に『べらくり』があります。「べらくり」とは地元の方言だということですが……。
『べらくり』は、A4判8ページだて、オールカラーのフリーペーパーです。
表紙に誌名の由来があり「べらくりとは…『根こそぎ、全て』といった意味の方言で、地域の情報を根こそぎ取り上げていきたいという想いを表しています」と書かれています。
が、「べらくり」は『日本方言大辞典』(徳川宗賢他、小学館、平成1)にも『全国方言辞典』(東条 操、東京堂、昭和26)にも、また地元の『宮崎県方言辞典』(原田章之進編、風間書房、昭和54) や県北の隣接地域・延岡地域の方言を集めた『延岡のことば』(小嶋政一郎、光輪舎、昭和44) にも載っていないことばです。
『べらくり』の発行元は、宮崎県の平成23年度「中山間地域新産業・雇用創出強化事業」の助成金を受けて活動している「がんばろや日向ブランド協議会」(略称GBK)で、同誌裏表紙の解説によると「宮崎県北部ひむかエリアを活動範囲として、フリーペーパーやホームページ上でのウェブショップを通じ、広く情報発信を行い、地域特産品や観光資源をPRすると共に、地域の魅力を再認識してもらうことを目的としています」とのこと。
これまでに、プレ創刊号の「瓦版」(平成23年6月)からスタートして、第1号(同8月)、第2号(10月)、第3号(11月)、第4号(12月)まで発行されています。
(写真はクリックで拡大表示します)
毎号1万部を印刷し、県北地域の各市役所や支所、役場などの公共機関、公民館、道の駅やレストラン、スーパーなど多くの人が立ち寄る施設などに置いてあるということです。
第3号を開くと、「耳川水系が育んだ森のおくりもの」と題した特集で、上流部の椎葉村で草木染めをしている女性2人、中流域の美郷町(みさとちょう)南郷区でカヌーやギターを作っている男性、下流域の日向市で今では日本で2軒しかないという天然樟脳を作っている男性を紹介する記事があります。
また「べらくりスタッフが行く!」と題して美郷町西郷区にある森の科学館の活動の紹介や、「風のひと土のひと」(外から移り住んだ人、元からの地元の人)、「BERAKURI KIDS」=いまどきの子供事情。取材先で出会った子供たちの将来の夢を聞いちゃいました! や、「ひむかの特産品をあなたにお届けする べらくり便」としてインターネットや電話で注文できる農産物や工芸品の紹介、それに日向市東郷町坪谷にある「若山牧水生家」の紹介、などが紙面を飾っています。
その他、各号からは、この地域の“ひと・もの・うごき”に焦点を当て、誌名にあるように、丹念な取材を通して「べらくり」伝えたいという思いが伝わってきます。
なお、この『べらくり』はこの2月に第5号までを発行してひとまずその役割を終えますが、その後も継続して発行できるよう検討中だとのこと。同じく県北日向地区で発行されている『KireI』(きれい)という月刊のタウン情報誌(フリーペーパー、16ページ)の中で、その一部門と位置づけて掲載を続けていく予定だということです。
《参考》
①インターネットの検索エンジンに「べらくり 方言 宮崎県」と入力して検索すると、何件かヒットします。
②また、宮崎県の北東端の北浦町(現在は延岡市)の『ふる里ことば・北浦の方言集』(平成15)には「ベラクリ 全部」として載っています。