日本の各地には歴史的地理的に発展した方言があります。現在でも藩政の境界が方言区分に見られます。封建時代が終わって政治の中心が京都から東京へ移ったとき、関西の言葉はそれまでの日本の中心的な言語の役割を終えて上方方言と呼ばれるようになりました。そして、江戸語と呼ばれていた東京の言葉は近代日本の標準語の地位を築きあげました。
歴史的地理的要因に支えられてきた方言は、各地域で生活の中に生き続けています。一方、歴史的地理的方言を基盤としているけれども、若者の気持ちを伝えるのに一役かっている方言があります。ここでは、それを「胸キュン方言」と呼ぶことにします。
「胸キュン方言」は、「方言を話している人って、ステキ!!」という意味が込められています。「胸キュン方言」を使うことによって自由自在にキャラクターを演出し、作り上げた人物になりきって伝えたい気持ちを相手に伝えることができます。
『方言男子コレクション』(2010・編著レッカ社)、『方言男子パラダイス』(2011・同社編著)という本の中にかっこいい男の子が登場します。県民性を参考に各県のイメージを男の子に仕立て上げてあります。さすがにどの県の男の子も乙女心を“キュン”とつかむにふさわしくスタイルも抜群です。
各県のページに県民性と「愛の胸キュン方言・会話例」などが紹介されています。これが「胸キュン方言」の元祖と思われます。栃木の方言を話す男子が「ここんギョウザ……まーずうめーんさ。ぜひ食べてみっぺ。(ここのギョウザとてもおいしいんです。ぜひ、食べてみてください)」と話しかけると、女の子が「なに、デートの誘いけ(なに、デートのお誘い?)」と答えています。
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栃木の方言を話す男の子はぎょうざのストラップを携帯につけています【写真1】。「あー、ほうかあ……あやまったもんだんべー(ああ、そういうことですか……こまりましたね)」と言っています。「っぺ言葉」や「べーべー言葉」で意志、誘い、推量などを表します。茨城の方言男子は「まあ、テキトーに座って納豆食うっぺ?(納豆食べましょう?)【写真2】」と言っています。
方言男子が使う「っぺ言葉」や「べーベー言葉」の分布は、東北地方をはじめ、北関東の栃木、群馬、茨城、埼玉、南関東の神奈川、千葉と非常に広い範囲に分布しています。女性も負けずに こん夏は、祭りさ、行ぐべ!「方言お嬢様」とか「方言令嬢」しない?そして、胸キュンで方言男子ゲットしっぺ。