地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―

第215回 大橋敦夫さん:粉細工「ちんころ」を十日町弁でプロデュース(新潟県十日町市)

筆者:
2012年8月18日

第150回でご紹介した十日町市(新潟県)の商店街に、また新たな事例が加わりました。

【写真1】
【写真1 ちんころ】(チラシ内写真より)

○「ちんころ」とは

米の粉(しん粉)をこねて細工した子犬の人形で、食紅で彩色されています。節季市(1月)や、雪まつり(2月)の際に、縁起物として販売され、古くから地元で親しまれてきたものです。

○商店街のロゴに

駅前通り商店街振興組合は、十日町で世代を超えて愛されてやまない「ちんころ」に着目。平成17年に、まちづくり推進を意図し、「ちんころ」をロゴマークにしています。

【写真2】
【写真2 ポスター】(クリックで拡大表示)
【写真3】
【写真3 チラシ(表)+(裏)共通語訳】
(クリックで中身全体を拡大表示)
【写真4】
【写真4 Tシャツ】(クリックで拡大表示)

今回、ポスターとチラシが用意され、商店街のあちこちで目にすることができます。そのポスターとチラシに、十日町弁をあしらったねらいについて伺ってみました。

●キャッチコピーや呼びかけの文章に十日町弁をお使いになった意図は?

雪まつりなどで、来ていただいた観光客の方々に、内面的な面からもおもてなしをしたいと考えました。方言を通じて、お客様と会話ができて、ますます十日町を好きになってもらえたら嬉しいです。

●市民の方々、観光客の皆さん、それぞれの反応はいかがですか?

観光客の皆さんは、「かわいいキャラクターですね」と言って、チラシを手にしてくださいます。何人かに一人は、方言の使い方をおたずねになる方もいらっしゃいます。意外と多くの地元市民の方が、チラシをもらっていかれるので驚いています。

ポスターやチラシは、年間を通じて目にすることができますが、当の「ちんころ」は、冬の風物詩。ぜひ、その時期に訪れてふれてみたいものですね。

筆者プロフィール

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics

井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。

(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

 

  • 大橋 敦夫(おおはし・あつお)

上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

大橋敦夫先生監修の本

編集部から

皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。

方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。