江戸期、佐原では、水郷地帯で収穫された早場米を生かした醸造文化が栄え、みそ・しょう油・みりん・酒が船便によって江戸に運ばれ、その食文化を支えました。天領として、また、自由闊達な商業地域として、江戸の文化や風習も入って栄えた佐原の様子は、
お江戸見たけりゃ佐原へござれ 佐原本町江戸まさり
と、うたわれるほどでした。
現在も、観光ポスターのコピーで「東京にはない江戸がある」と自負するごとく、「江戸まさり」が町づくりのコンセプトとなっています。
また、ことばの面でも、佐原の旦那衆の話し方は、語尾が下がる江戸口調であると言われます。そこで、佐原で江戸弁をあしらった方言グッズがあるか、探してみました。
で、見つけたものは、佐原方言を生かしたものでした。
まずは、拍子木のことを当地では、「チャキ」と言いますが、実物とミニチュアが観光協会で売られています。
次に、その名も「でぼけ」という焼酎ですが、ビンの裏に説明のラベルが貼られています。
水郷佐原「でぼけ」の話
佐原では昔から旅に出る時や、祭礼で山車が出発する時など、安全を祈り皆で酒を一気に飲み干し、清め、元気をつけて出て行きました。
このことを「でぼけ(出祝)」といい、「でぼかえ」ともいいます。又、帰りついたときは無事を感謝し「いりぼけ」と称し、酒を飲みます。
「でぼけ」の語源は、「出る」+「ほく(=祝う)」と考えられ、「ほく」の部分は、ほく(ほぐ)> ほかう > ほかい > ほがい > ほかえ、のような語形変化が見てとれます。なお、県境を越えた、北側の茨城県内にも似た語形が分布します。
でぼけーざげ…… 祭りや祝いの儀式などにでかける前に飲む酒。(出島・麻生) でぼかい…… 祝いの儀式に出発する前にする祝い。(酒宴もしくは酒を飲む)(潮来・鹿島) いりぼがい…… 結婚式のとりきめなどの使者が帰ってきたときにする祝い酒。(桜川・麻生)
(『茨城方言民俗語辞典』東京堂出版による)
佐原側では、利根川をはさんで一つの地域とくくることもできるとして、「ちばらぎ」と称することもあるそうで、その名を冠した銘菓もあります。
ベースには、地域の文化があってこそ花開いた江戸まさりであることが実感できました。