副詞+動詞の場合も前回と同じようなことが言える。例えば、wiederという副詞には「もとに戻って」という意味と「もう一度」という意味があり、前者では1語に書き、後者では2語に書くことを基本とすると言う。従って、wiedergebenは1語に書いて、「(物を)返す」、wieder anfangenは2語に書いて、「再度始める」ということになる。しかし、いつも両者の区別がつくとは限らない。「もう一度何かをする」ことは「元に戻って同じことを繰り返す」場合が多いからである。例えば、wieder sehenと2語に書くと「元通りに見えるようになる」という意味であるが、wiedersehenと1語で書くと「再会する」という意味だとされるが、「相手の顔を見るという前回と同じ行為を繰り返す」という点では同じことである。他には、vorher sagen「前もって言う」、vorhersagen「予言する」があるが、「予言する」ことは「前もって言う」ことに他ならないから、両者は発言行為であることに変わりはなく、ただ、その発言内容が一般的な事柄か、それとも発言内容が的中するかどうかに重点があるのかといった視点の違いである。
davonkommen「危険などを逃れる」などにおけるda+前置詞、aufeianderprallen「衝突する」などの前置詞+代名詞などの複合的な副詞が動詞と熟語を構成する場合は、両方にアクセントがある時は2語に書き、複合的な副詞だけにアクセントがおかれ、動詞にはそれがない時は1語に書く、とされる。しかし、このようなアクセントの区別は意味に基づいているだろうから、その意味的な違いを記述しないことには、特にドイツ語を母語としない人々にとっては意味がない。これは、前者の場合はdaやeinanderにまだコンテクストにおいてそれが指すものがあり、後者はそれの指示関係が失われて単なる副詞となっているということであると思われる。従って、davon,aufeinanderは前者ではそれぞれ「そこから」、「お互いを目指して」という意味であり、後者では「ある場所、ある状況から」、「相互に」という漠然としたものを表している。