Waffel「ワッフル」といえばベルギーが有名で、マネケン社によって国産の本格的なベルギー・ワッフルも簡単に手にはいるようになった。ベルギーを旅した人なら、言葉に出来ないほど美味しい、焼きたての熱々のワッフルを道ばたで頬張った感激を忘れがたいという向きも多かろうが、家庭で手作りのベルギー・ワッフルを楽しめる道具も日本で普通に見かけるようになった。
因みにマネケンというオランダ語(フラマン語)は、ドイツ語のMännchen「小男」のことで、ベルギー、特にブリュッセルにおいては、あの名高い「小便小僧」のことを指している。世界三大ガッカリで有名であることはともかく(後の二つはコペンハーゲンの人魚姫とシンガポールのマーライオン)、各国からの観光客が必ず立ち寄って記念写真を撮るブリュッセル名物ではあるので、国産ベルギー・ワッフルの社名に選ばれているのである。
さて実際にはベルギー・ワッフルでさえ、Lüttich (Liège) リエージュ風とBrüssel (Bruxelles) ブリュッセル風とがあるのだそうで、その他に北欧風だとか、アメリカ風だとか、果ては香港風というものまで、多様なヴァリエーションがあるようだ。確かに日本でもマネケン社のベルギー・ワッフル以前から、パンケーキ風の生地でクリームをくるんだタイプとか、ビスケットような固いタイプとか、違う種類のワッフルが存在した。
こうなると、そもそも何を以てワッフルというのか分からなくなってくる。実際にはどうもワッフルのメルクマールは、生地の質やふりかける砂糖や塗るジャムやクリームにではなく、あの独特の格子状の形状にあるようだ。
語源辞典によれば、ワッフルはオランダで生まれた言葉だが、その元になったのは、ドイツ語でならweben「織る、編む」に対応する意味を持つ言葉であった。Gewebe「織物」とかWabe「蜂の巣」という、webenと語源を同じくする概念から考えてみるに、やはりあの格子状の形こそがワッフルの特徴とされていたのだろう。