『英語談話表現辞典』覚え書き

(28) つなぎ語:言い換え

筆者:
2010年9月2日

今回はつなぎ語のなかの言い換えに用いられる表現を考えてみます。代表的な語句はin other wordsです。言い換えの基本は自分の発言の中でより正確な言い方に換えることです。次は本辞典からの例ですが、前に言ったことを具体的にわかりやすく説明しています。

1 〈自分の発言を〉言い換えると, つまり:France is like China. In other words, the French are constantly eating, drinking, and talking about food. フランスは中国に似ている. つまり, フランス人はのべつ幕なしに食べ, 飲み, そして食べ物の話をしているのです.

また、相手のことばを要約して「…ということですね」という確認にも用いられます。

2 〈相手の発言を受けて〉要するに, つまり:“I’m afraid there isn’t much we can do to help.” “In other words, you can’t be bothered.” 「あまり多くはお手伝いできないんじゃないかしら」「つまり, ごめんこうむるってことなんですね」 / OK. I have listened to a whole lot of excuses. In other words, you didn’t want to come with me. Why didn’t you say so in the first place? わかったわ. 言い訳はすべて聞かせてもらいました. つまり, あなたは私と一緒に来たくなかったのね. どうして最初にそれを言わなかったのよ.

第2例は具体的な相手の発言が出ていませんが、いろいろ聞かせられた「言い訳」から相手の真意を代弁する言い方になっています。

or rather も言い換え表現の代表格のひとつです。この語句の基本は語句の言い換えです。本辞典では、理解してもらうためにより妥当な言い方に換える場合とより正確で精密な言い方に換える場合の二つに分けています。

1 〈より適切な言い方に言い換えて〉…というよりはむしろ…:Father came home last night, or rather very early this morning. 父は昨夜, というよりむしろ今朝とても早く帰って来た / Tipping—or rather not tipping is a good way of showing your disapproval as well as your appreciation. チップを渡すこと―というより, チップを渡さないということは, 感謝の気持ちのみならず不満を表現するうまい方法である.

2 〈より正確な言い方に言い換えて〉もっと正確に言うと:We used to tease George about his height, or rather his lack of height. 僕たちはよくジョージの背丈というか, もっと正確には, 背の低さをからかったものだ / It was a beautiful day. I spent hours sitting in the garden, or rather lying on a bench. よく晴れた日であった. 私は庭で腰をおろして, というか, もっと正確に言うと, ベンチで横になって, 何時間も過ごしました.

たとえば、語義1の第1例は ‘last night’ と言うよりも ‘very early this morning’ のほうが状況を言い表すより妥当な言い方ですが、語義2の第1例は無標な ‘height’ という単語をより正確な ‘lack of height’ という言い方に言い換えたものです。また、言い換える「正確な」表現には、語義1の第2例や語義2の第1例からもわかるように、見方によっては正反対の意味の語がくることもあります。次は三省堂コーパスの用例を改変したものですが、その「反対」ということが「態」の違いで表わされています。

When I am at Bill’s place, I always wake in the night, or rather is woken. This is because of Bill’s talking in his sleep. ビルのところに泊ると、いつも夜は起きている、というか起こされるんだ。というのもビルが寝言をいうのさ。

また、or rather は in other words 同様、文の言い換えにも用いられます。

《精神科医の診療について》“What does he do?” “Talks. Or rather, I talk. He listens.” 「先生はどうされるのですか」「お話しされます。というか、私が話して先生が聞き役です」

筆者プロフィール

内田 聖二 ( うちだ・せいじ)

奈良女子大学教授

専門は英語学、言語学(語用論)

主な業績:

『英語基本動詞辞典』(1980年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基本形容詞・副詞辞典』(1989年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『英語基礎語彙の文法』(1993年)英宝社(衣笠忠司、赤野一郎と共編著)
『関連性理論-伝達と認知-』(初版1993年、第2版1999年)研究社(共訳)
『小学館ランダムハウス英和大辞典』(第2版1994年)小学館(小西友七・安井稔・國廣哲弥・堀内克明編、分担執筆) 
Relevance Theory: Applications and Implications, 1998, John Benjamins.(Robyn Carstonと共編著)
『英語基本名詞辞典』(2001年)研究社(小西友七編、分担執筆及び校閲)
『ユースプログレッシブ英和辞典』(2004年)小学館(八木克正編集主幹、編集委員)
『新英語学概論』(2006年)英宝社(八木克正編、共著)
『思考と発話』(2007年)研究社(共訳)
『子どもとことばの出会い』(2008年)研究社(監訳)
『語用論の射程』(2011年)研究社

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