(伊藤事務機タイプライター資料館(2)からつづく)
![伊藤事務機の「Densmore Typewriter No.5」 伊藤事務機の「Densmore Typewriter No.5」](http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/03/ito3a.jpg)
伊藤事務機タイプライター資料館には、「Densmore Typewriter No.5」も展示されています。デンスモア・タイプライター社は、エイモス・デンスモア(Amos Densmore)が1891年に創業した会社ですが、「Densmore Typewriter No.5」の発売時点(1903年)では、娘婿のスタードバント(James Warner Sturdevant)が社長を継いでいました。伊藤事務機の「Densmore Typewriter No.5」は、製造番号が36037なので、1908年頃の製造だと考えられます。
![伊藤事務機の「Densmore Typewriter No.5」のキー配列 伊藤事務機の「Densmore Typewriter No.5」のキー配列](http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/03/ito3b.jpg)
伊藤事務機の「Densmore Typewriter No.5」のキー配列は、いわゆるQWERTY配列で、「5」のシフト側に「£」があり、その一方で「$」や「¥」が右端に配置されています。基本的にはイギリス輸出モデルのキー配列なのですが、香港あるいは日本用にキー配列を改造された可能性も考えられます。
![伊藤事務機の「Densmore Typewriter No.5」のタイプバスケット 伊藤事務機の「Densmore Typewriter No.5」のタイプバスケット](http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/03/ito3c.jpg)
プラテンを上げると、タイプバスケットが見えます。タイプバスケットには、42本のタイプバー(活字棒)が、上下たがい違いに円形に配置されています。キーを押すと対応するタイプバーが跳ね上がってきて、プラテンに置かれた紙の下側に印字がおこなわれます。「Densmore Typewriter No.5」は、いわゆるアップストライク式のタイプライターで、プラテン下の印字面がオペレータからは見えません。
![キーを押すと滑らかにタイプバーが跳ね上がってくる キーを押すと滑らかにタイプバーが跳ね上がってくる](http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/03/ito3d.jpg)
「Densmore Typewriter」の特徴は、可動部分にボールベアリングを使用していることで、タイプバーの動作も非常に滑らかです。「Densmore Typewriter No.5」においても、その点は同様なのですが、他の部分は1891年以来ほとんど改良が加えられておらず、わずかに「BACK SPACE」機構と、シフトロックおよび「UNLOCK」キーが追加されただけでした。その意味で、「Densmore Typewriter No.5」は、1903年の発売時点で、すでに競争力を失っていたと考えられます。