春の伊豆で、ゼミ合宿。静岡では、表記の地域性はどうだろう。都内と同様に、「月極駐車場」がほとんどだ。
春分の日の前日のことだった。思いやりの溢れる野球で、ホームインできた。野球は皆に出番が回り、皆のことばを借りると「楽しい」。前回は、この球場のホーム直前で気持ちが焦り転んで「憤死」、ケガの治療のために病院へ連れられて行った。そこで珍姓を知れたのは収穫だったが、労災の説明が恥ずかしさもあって難しかった。
フィールドから目に入った「小室山公園」の「園」の字は、明らかに点画が略されていた(写真)。草で点画を再現するためには、字形を略すしかなかったのだろう。その場では中身は「エン」が縦に書いてあるように見えた。しばしば見られる略字だ。ここでは、筆記経済よりも、植物というものの与える物理的制約条件によって、略字が選択されたのだろう。ただ、その字体は、帰宅後に写真で改めて確かめると、中身がなんだかよく分からないものだった。草木は延びたり刈られたりするので、まさに「一期一会」だ。
次に企画されたポートボールは、全く思わぬ活躍をさせてもらい、こんなところで適性を見つけられるとは、人生分からないものだ。のび太のあやとりではないが、温泉場で浴衣姿でのスマートボールも、力の入れ加減を覚え、ついに打ち止めとなったことがあった。役立たないところばかりで力が発揮される。
ゼミ生が企画してくれた障害物競走、皆が役割を担って、責任感を持って動いてくれる。本気で準備してくれた魚肉ソーセージが太い。炭酸飲料もレクリエーションの本には書いてあったとか、それよりはましだし安全だが、バリウム検査のぶん、学生諸君よりも馴れていたかも知れない。食べたくないときに口いっぱいにソーセージを頬張るのは辛いが、頑張る。女子は、4つに噛みきって含んでいたそうだ。
これだけ盛りだくさんでは、小室山に登るどころではない。恐竜のオブジェに登る男子、迫力がある長くて恐い滑り台などは、また来年以降だ。
短い休憩時間に仮眠を取る。見た目はどうにか溶け込んでいるそうだが、年齢が倍以上違う。「先生、寝ていましたか?」 何でそんなことまで分かるのかと驚くと、目が充血しているからとのこと。学生との距離は、就職当初はお兄さんくらいだったものが、だんだんお父さんに近づいてきた。
皆が成人なので、夜には少しばかりのビールも飲める(ここではビール人気は低落気味)。怪しくも単純な手品も披露する。名付けて「いきり立つハンカチ」。ハンカチが生き物のように動き出すので、どこでも面白がってもらえる。笑いから驚異に変わる。タネが分からないという。観客の視点を導くことが大切だ。皆の個性も浮き立ってくる。2年間だけだが海外にいたという帰国子女は、「嗜好品」を「かっこうひん」と言って、サークルの後輩に直されたと話す。まあ、確かに「喝」に少し似ている。「たしなむ」っぽくない、「シ」とは読めない、難しすぎると言う。今、冷静に考えてみると、形声符としては機能を失っていることがうかがえる。隣の女子は、「ちょうこうひん」と読んでいたそうだ。向かいの女子は「お猪口に似ている」とのこと。そういえば、「猪口」全体のパーツとどことなく似ているか。連想ゲームのようだ。
「よかバッテン」という方言が出ると、「×か」と首をかしげて指で示す男子。九州方言も、アニメなどでキャラクターが使わないと広まらないようだ。