朝食には紅茶がついていた。Liptonはさすが中国、「立頓」と音訳されている。「立」を当てたのは、北京語のli4(リー)ではなく、広東語でlap(ラプ)となるためか。「利普顿」という訳もかつてはあった。
中国では、テレビにも、漢字がたくさん現れる。
重さなどの単位の英語tonに当てた「噸」の簡体字である。これは、清代の中国製か江戸時代の日本製か古い用例の年代が際どい。日本ではほぼ消えたが、こちらでは街中でも普通に見かけられ、政府によって規範化されている。メートル法では、センチメートル(日本では今でも書誌情報などで見かける「糎」)に当たる「厘米」も見かけた。
「ハロウ!」という挨拶に当てていた。「拜拜」で「バイバイ」は音訳ながらなかなか上手だ。
「(不×用)打(口+斤)」という地域性を感じさせる字も、ドラマの字幕には出てくる。
国際問題に発展した「漢城」(ソウル)は、オリンピック名としてまだ使われていた。
CMでも気にかかる字が出てくる。
「膚」の簡体字で、日本と違って肉月の形声文字で「肌」ときれいに対応している。「肌」がキを音読みとすることは、日本では表外の字音であり、意識されにくい。
MARUBI 丸美
日本語の訓読みがローマ字で出ていたが、音声では「yuan2(ユアン)mei3(メイ)」と漢字を中国語読みしていた。
テロップに、独特な書体で現れた。これは近年、中国語圏で顔文字として使用されるようになった漢字だ。相当普及し、jiong3という本来の字音が復活して熟語にまでなって画面や紙面の上に現れたために、これを中国語の乱れと非難する向きと、集団内のものに過ぎないという楽観論とが巻き起こったそうだ。実際には、集団や場面に限って使われる変異にすぎず、後者の立場でいてよさそうだが、社会に広範に広まることがあれば、それはそれで世間で必要とされた結果といえるだろう。
✓
このマークがいくつも答案用紙に、確か赤い色で書き込まれていた。塾のシーンか。日本人が見ると、間違いの山のように見えるが、こちらではチェックマークが正解を指す(『漢字の現在』に各国のチェックマークなどを対照させてみた)。
日本では、この外来の「✓」マークは、JIS第2水準までに入っていなかった。そのために、「レ印」「v」を書いて下さいなどと指示がしばしば印刷されてきた。JIS第3、第4水準選定の作業時に、英語の教科書でこのマークを見かけて、提出用にスキャンした時には、これで採用されるのでは、とホッとした記憶がある。
日本では、細々とした区別があらゆるものに生まれる。試験で、空白の解答に対してはこのチェックマークを入れ、書いたけれども正解にならなかった「×」とは区別していると、ある塾が宣伝をしていた。「×」には、まだ可能性があるとのことだ。