本来なら同じ単語のはずなのに、意味が大幅にずれているというのはよくあることです。前回、日本語のルーズと英語のlooseは、発音も違うし、意味もかなりズレているということをお話ししました。
英語のlooseには「だらしない」という意味はありませんので、「彼はルーズだ」と言いたいときに、He is loose.と言ってしまったら、おそらくなにを言っているのか理解されないでしょう。こうしたズレは、どうしたら見つけることができるでしょうか。おススメの方法は、2つあります。
ひとつは、「知っていることばでも、辞書で確認すること」です。むしろ、知っている単語、やさしい(と自分が思っている)単語ほど、しっかり辞書を引いて確認すると、意外にわかっていなかったり、思った以上に広い用法があることに気づくことができます。
そしてもうひとつは、looseのような形容詞の場合、「何を」修飾するのかを、しっかりチェックすることです。その単語の「意味」だけを覚えるのではなく、形容詞の場合は特に、「何を修飾するための語か」ということに着目してみましょう。
まず、こちらを見てください。
あなたが辞書を引くとき、ひょっとして、丸をつけたあたりだけを見て、「looseはゆるいとか締まっていないという意味だ」というところで満足して、辞書を閉じてしまっていませんか? その引き方で、英語をしっかり理解できるようになったり、まして話せるようになることは、ありません。
形容詞の場合、「なにを修飾するのか」をみることが大切、とお話ししました。それは、こんなふうに書かれています。
まず[1a]には、〈ねじ・部品などが〉〈ボタンなどが〉とあります。また、用例でも、「歯」や「テーブルの脚」などが挙がっています。ですから、「本来なら(固定されていたりして)動かないもの」がゆるんでいるようすをあらわす、というのがlooseの使い方のひとつであることがわかります。
そして、[1b]には、鎖、ひも、結び目などが挙げられています。このタイプのものは、「ゆるんだ」だけでなく、「ほどけた」という訳語になることもあるのですね。
次に[2]を見てみましょう。
髪、書類などの紙、絵の具などが例として挙がっていますが、こちらは「束ねられるべきものが束ねられていない状態」をあらわしているといえそうです。特に箱入りだったりまとめ売りされていたりするものをバラで買いたいときなど、Can I get it loose? と聞けばよいのだということがわかりますね。
[4]は、洋服の登場です。前回、ファッションの文脈では、ルーズをそのままlooseといってもだいじょうぶだと述べました。そのことが、ここで確認できます。
このように見ていくと、他にも「織物などの目が(粗い)」「動物などが(つながれていない)」「団体・組織などが(統制のゆるい)」など、実にさまざまな場面でlooseを使うことができることがわかります。
その一方で、looseの全体を見渡しても、「人の性格・性質が(ゆるい、ルーズだ、だらしない)」という意味は、まったくないことが見てとれます。そして、「人」に対してlooseという語を使うときは、「身持ちが悪い、性的にだらしがない」という意味にとられることがあるということも、辞書を見ればわかります。
looseの基本的な意味は「ゆるい」と覚えていれば十分でしょう。でも、「何が」ゆるいのかがわからなければ、使いこなすことはできないのです。そんなとき、辞書は強い味方となります。読み方を覚えて、しっかり使っていきましょう!
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〈出典〉
- 三省堂『ウィズダム英和辞典 第4版』 iPhoneアプリ「辞書 by 物書堂」版 (2019)