(菊武学園タイプライター博物館(18)からつづく)
「Featherweight Blick」は、ブリッケンスデアファーが1906年から1919年頃にかけて、コネチカット州スタンフォードで製造していたタイプライターです。「羽のように軽い」(Featherweight)と銘打っていますが、印字機構は「Blickensderfer No.5」や「Blick No.7」と同様、タイプ・ホイール機構なので、かなり重たいものです。「羽のように軽い」のは、筐体の素材がアルミニウムで出来ており、マシンを持ち上げる際に(比較的)軽いだけであって、キータッチが軽いわけではないのです。
菊武学園の「Featherweight Blick」(製造番号164396)の銘板には、「9 & 10 CHEAPSIDE, LONDON. MADE IN U.S.A.」と記されており、元々はイギリス向けの輸出モデルだったと考えられます。タイプ・ホイールには84個(28個×3列)の活字が埋め込まれていて、タイプ・ホイールがプラテンに向かって倒れ込むように叩きつけられることで、プラテンに置かれた紙の前面に印字がおこなわれる、という点は「Blickensderfer No.5」や「Blick No.7」と同じです。菊武学園の「Featherweight Blick」のタイプ・ホイールでは、上の列に、小文字の活字がzxkg.pwfudhiatensorlcmy,bvqjの順序に、上から見て時計回りに埋め込まれています。真ん中の列には、大文字の活字がZXKG&PWFUDHIATENSORLCMY?BVQJの順序に埋め込まれています。下の列には、記号や数字の活字が“()-%/⅛¼⅜1234567890½⅝¾⅞£;@’:の順序に埋め込まれていて、分数が1/8刻みになっているのが特徴的です。この「Featherweight Blick」のキー配列と同じ順序であり、上段のキーほど、タイプ・ホイールが大きく回転する仕組みになっています。大文字はキーボード左端の「CAP」キーを、記号や数字は「FIG」キーを、それぞれ押すことで印字され、タイプ・ホイールの高さが変わる仕掛けになっています。
菊武学園の「Featherweight Blick」には、右側面にも銘板があって、ブリッケンスデアファーのアメリカ特許が記されています。ただ、「Featherweight Blick」の発売が1906年であるにもかかわらず、最下段の特許は1892年4月12日です。しかも、銘板の右下には、ペーパーホルダーの留め金が上から取り付けてあって、銘板が一部読めなくなっており、雑な仕事の印象を受けます。また、菊武学園の「Featherweight Blick」は、筐体の下部がアルミニウム製ではありません。本来「Featherweight Blick」は、筐体全体がアルミニウム製のはずであり、その点で疑問が残ります。あるいはリストア時に、「Blickensderfer No.5」などの部品を使いまわした可能性が、かなり強く感じられます。