今週のことわざ

(あやま)ちを改(あらた)めざるこれを過(あやま)ちという

2007年9月10日

出典

論語(ろんご)・衛霊公(えいれいこう)

意味

過ちを犯していながら改めないのが、ほんとうの過ちである。過失はやむを得ないが、過ちと気づいたらすぐ改めよ。

原文

子曰、過而不改、是謂過矣。
〔子(し)(いわ)く、過ちて改めざる、是(こ)れを過ちと謂(い)う。〕

訳文

孔子(こうし)が言われた。「過失を犯して、そのままにしておくことがほんとうの過失というものだ。〔過失を犯しても、それを改めさえすれば、過失とはいえない。〕」

解説

『論語』には「過ち」に言及した部分が多い。「過ちは則(すなわ)ち改むるに憚(はばか)ること勿れ」〔学而(がくじ)〕、「小人(しょうじん)の過つるや必ず文(かざ)る」〔子張(しちょう)〕、「已(や)んぬるかな。吾(われ)(いま)だ能(よ)くその過ちを見て内(うち)に自ら訟(せ)むる者を見ざるなり」〔公冶長(こうやちょう)〕などである。
孔子がもっとも信頼していた弟子顔回(がんかい)については、「過ちを弐(ふたたび)せず〔=同じ過ちを二度とくりかえさない〕」〔雍也(ようや)〕ということを高く評価している。また『韓詩外伝(かんしがいでん)』にも孔子の言葉として、「過ちてこれを改むれば、これ過たざるなり〔=過ちを犯しても改めれば、それは過ちとはいわない〕」とある。
孔子の生きていた時代は、乱世の世で、あらゆる道徳律に一定の基準が無かった。こうした不統一の価値観が流行していることに孔子は危機感を抱き、自分の弟子たちに、たとえ一時的には自分の信ずる価値観からはずれた生き方をしても、過ちに気づきそれを改めさえすれば差し支えないということを強調する必要があった。

出典略解

論語

【書名】孔子(こうし)と、その弟子たちの言行録。孔子の弟子たちが師の言行などを記録したもので、原形は前五世紀の後半には存在したといわれる。仁や孝、君子のあり方などを二十編にまとめ、儒教の経典(けいてん)中もっとも重視され、「四書(ししょ)」の一つとなる。

筆者プロフィール

三省堂辞書編集部