出典
応(おう)ズル二科目(かもく)ニ一時(とき)与(あた)ウルレ人(ひと)ニ書(しょ)・韓愈(かんゆ)
意味
一つ一つの動作や行為、ちょっとした振る舞い。一度手を上げ、一度足を動かすということから、本来は、「ほんのわずかな労力」という意味に用いた。
原文
月日、愈再拝。……如有レ力者、哀二其窮一而運二転之一、蓋一挙手一投足之労也。……聊試仰レ首一鳴号焉。庸詎知丁有レ力者不丙哀二其窮一、而忘二一挙手一投足之労一、而転乙之清波甲乎。
〔月日(つきひ)、愈(ゆ)再拝す。……如(も)し力有る者、その窮を哀れみてこれを運転(うんてん)せんか、蓋(けだ)し一挙手一投足の労ならん。……聊(いささ)か試みに首を仰(あ)げて一たび鳴号せん。庸詎(なん)ぞ力有る者のその窮を哀れみて、一挙手一投足の労を忘れて、これを清波(せいは)に転ぜざるを知らんや。〕
訳文
某月某日、わたくし韓愈(かんゆ)が再拝のうえ申し上げます。(大海や大河のほとりには、風や雨を呼び起こし、天地の間を自由に往来する怪物がおります。しかし、もし、水が無く乾いたままであれば、かわうそにさえ笑われるようになるに違いありません。)もし、力のある人が、この弱っている怪物を哀れみ、水のある所まで連れて行ってくださる気持ちがあれば、それはほんの一挙手一投足のわずかな労力に過ぎません。……わたくしは首を上げて泣きたい。どうして力のあるお方が、わたくしの窮状を哀れみ、一挙手一投足のわずかな労を惜しんで、わたくしを清らかな波の中に連れて行ってくださることにお気がつかれないのでしょうか。