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第4回 【忘新年会】ぼうしんねんかい

筆者:
2019年12月30日

[意味]

忘年会と新年会をあわせた言い方。

[補説]

宴会などをする店側は使うが、客側は使わない。忘・新年会という表記も見られる。

[関連]

歓送迎会

 * 

毎年、年末が近づくと目にするのが「忘新年会」の文字。忘年会と新年会をまとめた言い方で、飲食店などのポスターやチラシなどで見たことがある人も多いことと思います。「忘・新年会」という書き方も見かけます。

初めてこの表記を見たときは、「何だか変だな」と思ったものですが、最近は見慣れたためか、あまり気にならなくなりました。小学校と中学校をまとめていう「小中学校」もあれば、ATMの「入出金」など同じタイプの複合語はほかにもたくさんあるので、それほど気にすることはなかったのかもしれません。

新聞記事では「忘新年会」「忘・新年会」ともあまり見かけない表記ですが、少ないなかで確認したところ、11月ごろから翌年2月にかけて街角景気を伝えるニュース、ホテルやレストランの宴会プランを紹介する記事に使用される傾向が見られました。ある意味、季節感のある表現とはいえそうです。「忘・新年会」はかなり前から使われていましたが、「・」の無い「忘新年会」は1990年代以降に見え始めます。バブル経済の崩壊による宴会の減少が表記に影響したというのは考えすぎでしょうか。

「忘新年会」の特徴といえば、主に店側が使う言い方だということです。客側が「忘新年会」と言うことはまずありませんし、忘年会と新年会は別々に開くものでしょう。同じ会でも歓送会と歓迎会を一緒に「歓送迎会」として行うケースはあるかとは思いますが……。そこが小中学校などの言い方と異なり、自分が使う言葉ではないため、「忘新年会」を初めて見たときに違和感を持ったのだと思います。とはいえ、店側はまとめて一緒にすれば、プランもポスターも1種類で済み、長い期間使えて経済的でもあります。「宴会」や「パーティー」としているものも見かけますが、季節感は出てきません。

今年の暮れは残念ながら仲間との恒例の忘年会を企画できませんでした。「では、来年の新年会と一緒に」という話になりましたが、2つをまとめて開催しても年を越せば、やはり「新年会」となるでしょう。

忘新年会
「忘新年会」出現記事件数

*日本経済新聞朝夕刊、日経産業新聞、日経MJの記事を調査。2019年は11月までの数。

* * *

新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)