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第5回 【時短営業】じたんえいぎょう

筆者:
2020年1月27日

[意味]

営業時間の短縮。

[関連]

深夜休業・人手不足・無人営業

 * 

2019年は「時短営業」が登場する新聞記事が急増しました。そのきっかけとなったのが、大阪府東大阪市のセブン―イレブン・ジャパンのフランチャイズチェーン(FC)加盟店が2月に強行した営業時間の短縮。その後、他の加盟店オーナーからも時短営業を求める声が相次ぎ、コンビニエンスストア業界では24時間営業を見直す動きが出てきました。

24時間営業は、店舗の稼働率を上げて売上高を増やすほか、深夜に商品搬入や清掃作業ができる効率的な店舗運営が可能とされ、コンビニの成長を支えるビジネスモデルとして定着してきました。それが人手不足や人件費の上昇などで加盟店の経営環境が悪化すると、この優れたとされるシステムも見直さざるを得なくなり、時短営業へと流れが急展開しました。コンビニ大手では、一部の店舗で深夜休業を認めたり、深夜時間帯の無人営業実験を始めたりするといった対策がとられつつあります。

日本経済新聞の朝夕刊(地方版を含む)で「時短営業」が記事に登場したのは2011年が最初で、わずか1件のみでした。その後は使用例が見られず2018年に2件目があり、2019年に一気に42件と増えました。面白いところは、「時短営業」は必ずしも「時間短縮営業」を略したものではないということです。2000~2019年の記事で「時間短縮営業」は0件。「営業時間短縮」は183件あり、「営業時間の短縮」なども含めれば相当の数に上ります。「時間短縮→時短」だからといって、単純に「時間短縮営業→時短営業」となったわけではないようです。

ちなみに折れ線グラフで「営業時間短縮」の山が高いのは、2008~2009年がリーマン・ショック、2011年は東日本大震災による電力不足が影響していると思われます。そして2019年の「時短営業」急増は、コンビニ24時間営業の限界を示したといえるのかもしれません。

折しも2019年は働き方改革関連法が施行、国内のコンビニ店舗数が初めて減少した年となりました。私たちにとって時短営業による利便性の低下を懸念することよりも、働き方を考え直すことのほうがより重要になってきているといえるでしょう。

 

「時短営業」出現記事数

*日本経済新聞朝夕刊

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事。金融機関に勤務後、1990年に校閲記者として日本経済新聞社に入社。長く作字・フォント業務に携わる。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書などに『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)、『加山雄三全仕事』(共著、ぴあ)、『函館オーシャンを追って』(長門出版社)がある。2018年9月から日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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