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第6回 【育児休暇】いくじきゅうか

筆者:
2020年2月24日

[意味]

育児のために取得できる休暇。

[補説]

法律に基づくのは「育児休業」。企業内で制度化したものを「育児休暇」と呼ぶことがある。育児休業に休み日数を上乗せした休暇制度などを設けているところもある。

[類語]

育児休業

[略]

育休

 * 

小泉進次郎環境相の「育休」取得が話題となりました。2019年8月のフリーアナウンサー、滝川クリステルさんとの結婚発表にもびっくりさせられましたが、第1子誕生による「育休取得表明」にも驚かされた人は少なくないでしょう。激務と思われる現職の国会議員・閣僚が果たして休めるのか、疑問でした。とはいえ、小泉氏は1月17日の記者会見で「賛否両論をしっかりと受け止めながら、公務最優先、危機管理を万全にし、いわゆる育休の時間を確保したい」と述べ、3カ月間で2週間分の休みを取るべく動きだしました。

ところで、育休といえば「育児休暇」と「育児休業」を略したものとされますが、小泉氏が取得するのはどちらなのでしょうか。国語辞典の「育児休業」の語釈には「育児休暇」という記述のあるものがあり同義ともいえ、報道でも両表記が見られました。

育児休業は、育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)に基づき、原則子供が1歳になるまでは男女を問わず休みが取得できるよう企業に制度化が義務づけられたものです。休業中は雇用保険から月給の67%(7カ月以降は50%)が支給されます。一方、小泉氏のような国会議員は一般の労働者とは異なり育児休業制度の対象外で、雇用保険からの給付金はありません(議員給与は満額出ます)。

法律に規定がないため小泉氏の場合は育児休業ではなく、独自に時間をやりくりした休暇を取得するということで、言葉としては育児休暇のほうが適切だといえるでしょう。メディアによっては、あえてカギカッコ付きの「育児休業」としているところもありました。小泉氏が会見で言った「いわゆる育休」にはそんな意味が含まれています。

 

「育児休暇・育児休業・育休」の登場記事件数

*日本経済新聞朝夕刊の記事を調査。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事。金融機関に勤務後、1990年に校閲記者として日本経済新聞社に入社。長く作字・フォント業務に携わる。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書などに『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)、『加山雄三全仕事』(共著、ぴあ)、『函館オーシャンを追って』(長門出版社)がある。2018年9月から日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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