京都ことばの現在を3つの観点から見てみることにします。
まず、第一は、商品としての京都ことばの共通語化です。京人形もそれを反映してか、ショーケースに昔ながらの「おこしやす」という人形と、「新いらっしゃいませ」という人形が並べられています【写真1 京人形のショーケース】。店員さんは「いらっしゃいませ」とお客に声をかけていて、「おいでやす」「おこしやす」などは少数になりました。また、「舞妓はん」と「舞妓さん」も「はん」から「さん」に移行しています。「舞妓はん」と「舞妓さん」と表示された別々の油取り紙が、狭い棚に並んでいます。
第二番目は、京都ことばが地域的な広がりのある商品に登場していることです。寺町通りに行くと、ストラップやお菓子に「関西限定」「近畿地区限定」と表示された商品が売られています。「めっさ!! うまい」「ノリノリどすえ」「グーどすえ」など若者ことばや外来語を京都ことばと組み合わせてうまく使っています。京都ことばは京都だけという従来の発想から抜け出して、地域的な広がりを持たせたうえに、若者言葉、外来語とのコンビネーションですから、“今様京都ことば”といえます。
第三番目は、京都ことばの国際化についてです。例えば、祇園で4か国語の多言語表示を見かけました【写真2 祇園の4か国語表示】。ほかの3言語の上に書かれている日本語は共通語ではなく、京都ことばです。日本の都市では多言語表示をよく見かけるようになりましたが、日本語はたいてい共通語表示になっています。他の言語の中で活躍する京都ことばの例です。
京都では、平成17年に年間「観光客5000万人構想」を宣言しました。先斗町へ行ってみると、「自転車、バイクは押して通っておくれやす」【写真3 歩行者専用道路標示】、「歩きたばこはやめておくれやす」【写真4 先斗町のれん会の吸殻入れ】など、公共のマナー向上に方言が使用されています。先斗町の狭い通りは、外国人もよく訪れる通りですから京都ことばでマナー向上を訴えるのは効果的でしょう。
新京極には、かつて京みやげの店がずらりと並んで、みやげには京都ことばがたくさん見られました。そして、お香が香り、邦楽の音がどこからともなく聞こえていました。
現在は、少なくなりましたが、一方で広域商品での使用、多言語表示、公共マナー表示等に多様に使用されていて、京都ことばは“ノリノリどすえ!!”