打ち合わせ会のために富山に行きました。帰るまでの数時間の余裕を「研究」にあてることにしました。街を歩き回って方言みやげ・方言グッズをあさり、交通標語などに方言が使われていないかを探し、観光パンフレットなどに方言が使われているかを確かめるのです。はたからみると、暇な観光客が資料を集めて写真を撮っているとしか、見えないでしょう。どうも崇高な学問とは見えないようです。
富山では、かけた時間の割に収穫がありました。これまで何度か来たことがありますが、以前はこれほど多くありませんでした。観光標語の「パノラマキトキト富山に来られ」はパンフレットなどあちこちで使われています。「キトキト」は魚などのいきいきした感じをいいます。「こられ」(きなさい)は敬語の「られる」を使った命令形で、時代劇で出そうな言い方ですが、富山ではよく使われます。スーパーのレジ袋節約のパンフレットでも「レジ袋いらんちゃ」のように「ちゃ」が使われていました。共通語の「よ」にあたることばです。いずれも地元では有名な、富山特有の言い方です。
圧巻は富山方言の番付表です。いくつかの目安で全国一になりそうです。駅前の観光案内所のボックスの窓に貼ってあるので、聞いたら、駅の中の売店で売っていると教えてくれました。100円。その後あちこちで見つけました。有料の方言みやげは色々ありますが、単価100円は安いです。それに、載っている単語の数が多くて、400語以上。ということは1語あたりの単価は25銭程度です。
実は外国語の辞書の値段と載っている単語の数を比べると、「一語一円」が目安になります。英語・フランス語・ドイツ語などの辞書は一語一円以下です。しかしタイ語・ぺルシャ語などの学習者の少ない言語だと、語数が少なくても辞典の値段が高いので、一語一円以上につきます。富山方言は、有力な外国語なみの経済性があるわけです。
もっとも現地に行かずに方言番付表を入手しようと思ったら、郵送料がかかります。折り目のつかない形で送ってもらおうと考えたら、1語1円以上につくでしょう。気づいたら、思い切って手に入れるに限ります。茶道でいう一期一会(いちごいちえ)は、人間についてですが、方言みやげでも一期一会の心構えが必要です。