ニュースを読む 新四字熟語辞典

第7回 【在宅勤務】ざいたくきんむ

筆者:
2020年3月30日

[意味]

オフィスに出勤せずに自宅で仕事を行う形態。IT(情報技術)を活用して場所に縛られない柔軟な働き方を意味するテレワーク(リモートワーク)のひとつ。

[関連]

時差出勤・一斉休校

 * 

今年に入ってから「在宅勤務」を目にすることが増えました。記事データベースを使って日本経済新聞での登場記事件数を見ると、2019年は1カ月あたり平均で8件程度だったものが、今年1月に17件となり、2月には68件と急増。3月は15日現在ですでに49件にもなっています。この「在宅勤務」急増には、新型コロナウイルスの感染拡大が確実に影響しています。

1月中旬に国内初の感染が確認されると、全社規模で在宅勤務を始める企業が出てきました。電通は2月24日、東京・汐留の本社ビルに勤務する男性従業員1人が感染検査で陽性だと確認されると、本社勤務の全従業員5000人を26日から在宅などのリモートワークにすると25日に発表。これに呼応した形で近くに本社を構える資生堂とパナソニックがそれぞれ従業員8000人と2000人を原則在宅勤務としました。これらは、安倍晋三首相による大規模イベントの開催自粛要請や小中学校・高校などの一斉休校要請に先んじた動きでした。

在宅勤務や時差出勤は今夏の東京五輪・パラリンピックに合わせ、公共交通機関などの混雑対策として官民で導入機運が高まっていたものです。それが新型コロナの感染拡大により、図らずも前倒しで普及するという格好となりました。3月2~4日のJR山手線の朝ピーク時(7時40分~8時40分)の利用者数が2月上旬と比べ約2割減るなど、混雑緩和も既に始まっています。

私も今月、入社30年にして初めて在宅勤務を経験。会社にいるのと全く同じに自宅で仕事ができるわけではありませんでした。環境の違いからきたのか、自宅のほうが意外にも疲れるものです。何をどこまでやるのか、といったルール作りが第一ですが、自宅でストレスなく仕事をするという環境づくりも大事になってくるでしょう。何はともあれ、新型コロナが早く終息し、落ち着いた日常生活に戻れることを願ってやみません。

 

「在宅勤務」の出現記事件数

*日本経済新聞朝夕刊の記事を調査。

* * *

新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事。金融機関に勤務後、1990年に校閲記者として日本経済新聞社に入社。長く作字・フォント業務に携わる。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書などに『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)、『加山雄三全仕事』(共著、ぴあ)、『函館オーシャンを追って』(長門出版社)がある。2018年9月から日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

毎月最終月曜日更新。