[意味]
1つの店舗が時間帯により、異なる2つの店として営業する形態。飲食関係に多い。
*
久しぶりに見るなあと思ったのが、3月20日付日本経済新聞の朝刊企業2面にあった「二毛作店」。作業服販売大手のワークマンが新業態の店舗を開業したという記事の見出しで、紙面に大きく躍っていました。
実は、久しぶりというのと同時に珍しいとも思いました。二毛作店を展開するビジネスは飲食関係に多いからです。ワークマンのようなアパレル関係は新聞では初めて見ました。新型店は時間帯によって店の看板や照明などを変えて、作業員向けの「ワークマン」とアウトドア衣料品などで女性客を集める「ワークマンプラス」の2つの顔を持つのだそうです。
二毛作といえばもとは「一年間に米と麦、あるいは米と大豆というように、二種類の異なった作物を同一の耕地に栽培し収穫すること」(大辞林)ですが、転じて「同じ場所で昼夜2つの店を営業する」二毛作が新聞記事に登場するのは1980年代以降。新聞記事データベース「日経テレコン」を使い日本経済新聞と日経MJ(流通新聞)に掲載された「二毛作店」を検索したところ、頻繁に紙面で見られるようになるのは1990年代でした。
ブレス(現プロントコーポレーション)が1990年にコーヒー(昼)とショットバー(夜)の二毛作店「プロント」で全国展開を始めると、歩調を合わせるように「二毛作店」が紙面に現れました。ほかにも「うどん×しゃぶしゃぶ」「ハンバーガー×ピザ」「そば×居酒屋」「パスタ×イタリア小皿料理」「サンドイッチ×パブ」「社員食堂×居酒屋」といったいろいろなタイプの店が登場。その多くは夜の営業でアルコール類を提供し売り上げ増を狙ったものです。季節によりゴルフ・スキー用品を別々に販売する店もあれば、飲食と異業種の組み合わせもありました。
ちなみに、こうした意味の「二毛作」を早く取り入れた国語辞典は『三省堂国語辞典』の第7版(2014年)で、俗語として「〔飲食店が〕昼と夜とで別の営業形態をとること。例、昼はラーメン店、夜は居酒屋」と説明しています。2000年代になり「二毛作店」は紙面に登場する回数が減りましたが、2020年代は新しいタイプの二毛作店が増え、紙面を飾っていくことになるのでしょうか。
* * *
新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。