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第19回 【不要不急】ふようふきゅう

筆者:
2021年3月29日

[意味]

さして重要でもないこと。

[補説]

必要でもなく、急いでもいない意から。

(新明解四字熟語辞典 第二版から)

 * 

決して新しいというわけではありませんが、「不要不急」は新型コロナウイルス禍に見舞われた2020年を象徴する新四字熟語と言えるのかもしれません。日本経済新聞朝夕刊での出現記事件数は、例年は30件前後なのですが、2020年は840件と突出していました。この10年で比較的多かった2011年(105件)の実に8倍。同年は東日本大震災で、嗜好品やレジャーなどの「不要不急の消費が冷え込んだ年」と言われています。

昨年2月ごろから新型コロナの感染拡大を防ぐ目的で「不要不急の外出を控えましょう」との呼びかけが各地で始まりました。イベントの中止や延期が相次ぎ、「不要不急」の基準とは何か、文化・スポーツは不要なものなのか、といった議論まで起こりました。簡単に線引きなどはできるものではありません。感染を防ぐ意味では仕方がなかったとはいえ、選抜高校野球、東京五輪・パラリンピックなどの中止・延期が決まり、同様にその年、その時にしかできない多くの物事が行われずに時間が過ぎていきました。無念の思いをした人は決して少なくないはずです。

私も20年以上追い続けてきた目標に手が届くところまできて、到達できない憂き目に遭わされました。心の中にぽっかりと穴があいてしまったような日々が続きます。多くの人にとって2021年こそは、目標に挑戦することができるような年になってほしいものです。

国内でもワクチンの接種がようやく始まりました。2年ぶりの選抜高校野球もさまざまな制約のなか甲子園球場で開催中です。世の中の動きが少しでも「コロナ前」の状態に近づき、新聞から「不要不急」の語が減るような社会になることを望んでいます。この欄でも明るい話題の四字熟語を取り上げられるように。

「【不要不急】ふようふきゅう」の登場記事件数

*日本経済新聞の記事を調査。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。金融機関に勤務後、1990年に校閲記者として日本経済新聞社に入社。長く作字・フォント業務に携わる。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書などに『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)、『加山雄三全仕事』(共著、ぴあ)、『函館オーシャンを追って』(長門出版社)がある。2018年9月から日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

毎月最終月曜日更新。