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第20回 【睡眠負債】すいみんふさい

筆者:
2021年4月26日

[意味]

睡眠時間の不足が借金のように徐々に積み重なり、心身に悪影響を及ぼすこと。

[関連]

睡眠不足

 * 

ここ数年、睡眠の質を改善するというグッズやサプリメントなどを見るようになった気がします。そのきっかけになったのは2017年に話題となった「睡眠負債」という言葉なのでしょうか。

「睡眠負債」とは米スタンフォード大学のウィリアム・C・デメント教授が提唱したもので、睡眠不足が少しずつ蓄積された状態のことをいいます。本人の自覚がないまま、仕事のパフォーマンスや日常生活での活力が低下し、がんやうつ病などの発症のリスクが高くなることがあるともされます。

新聞では以前からわずかですが登場する語でしたが、増え始めたのは2017年。NHKスペシャルが6月に「睡眠負債が危ない」を放送すると、同番組に登場したスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の西野精治所長の『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)がベストセラーに。他国と比べ睡眠時間が少ないといわれる日本人にとって「睡眠負債」は衝撃的なキーワードだったのでしょう、同年のユーキャン新語・流行語大賞のトップ10にも入りました。そして日経MJヒット商品番付の西の小結に選出されたのが「睡眠負債商品」。眠りの質に改善をもたらし、より健康に働くための商品に人気が集まったといいます。

さて、この「睡眠負債」。借金ならば返済(寝だめ)すれば解決するのかと思いきや、そう簡単にはいかないようです。休日の寝だめは解決策のひとつとはいえ、睡眠リズムを崩すこともあるのだとか。重要なのはいかに普段の睡眠の質を上げるかにかかっているのだそうです。私も枕の高さが合わないのか、なかなか寝付けないことがあります。少しでも快適に眠れるように新しい枕でも探すことにしましょう。

 

「【睡眠負債】すいみんふさい」の登場記事件数

*日本経済新聞の記事を調査。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。金融機関に勤務後、1990年に校閲記者として日本経済新聞社に入社。長く作字・フォント業務に携わる。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書などに『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)、『加山雄三全仕事』(共著、ぴあ)、『函館オーシャンを追って』(長門出版社)がある。2018年9月から日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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