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第21回 【無人店舗】むじんてんぽ

筆者:
2021年5月31日

[意味]

人工知能(AI)やキャッシュレス決済のノウハウを使い、レジ店員を不要とした小売店舗など。

[関連]

無人販売

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先日、漢和辞典編集者の円満字二郎さんと四字熟語に関するオンライン座談会で話をする機会がありました。これは日本漢字能力検定協会が2月に実施した「好きな四字熟語アンケート」の結果について、2人で講評するという企画です。

いろいろな四字熟語が好きな理由とともに応募されてきましたが、なかでも私の一推しは「無人販売」でした。「一期一会」「臥薪嘗胆」など故事を由来とした正統なものがたくさんあるなかで、私が気になってしまうのはどうしても「新四字熟語」。応募されたのは30代の方で「今までは、おばあちゃんが畑でとれたお野菜を売っているイメージでした。新型コロナウイルスの影響下にある昨今では、対面する必要のない販売方法として、大きな可能性を秘めていると感じます」という理由に、実に時代をよく表しているなと感心したものです。

新聞では「無人販売」よりも関連語の「無人店舗」のほうが多く登場します。2011~2020年の日本経済新聞で「無人店舗」が出現した記事件数を見ると、2017年から増加傾向となっています。初めはセルフレジの導入など人手不足に対応するための無人化でしたが、2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う非接触ニーズの高まりから無人化が注目されました。

「無人販売」では地方ののどかな販売風景を思い浮かべ、「無人店舗」ではカメラやセンサーで来店客の行動を分析しキャッシュレス決済をする最先端の店がイメージされるのかもしれません。同じ「無人」でも、無人販売にはどこか人のぬくもりが感じられる気がしてきます。

アンケート結果と座談会については漢検ウェブサイト「漢字カフェ」で記事が3回にわたり公開されています。四字熟語の魅力と魔力?に興味のある方はぜひお読みください。

 

座談会の記事はこちら。

https://www.kanjicafe.jp/detail/9549.html

 

 

「【無人店舗】すいみんふさい」の登場記事件数

*日本経済新聞の記事を調査。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。金融機関に勤務後、1990年に校閲記者として日本経済新聞社に入社。長く作字・フォント業務に携わる。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書などに『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)、『加山雄三全仕事』(共著、ぴあ)、『函館オーシャンを追って』(長門出版社)がある。2018年9月から日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

毎月最終月曜日更新。