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第22回 【対面授業】たいめんじゅぎょう

筆者:
2021年6月28日

[意味]

教員が教室などで学生・生徒らに直接行う授業。遠隔授業に対していう。

[関連]

対面講義

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新型コロナウイルスの感染拡大で、学校ではパソコンなどの情報機器を活用したオンライン授業(遠隔授業)が増えています。授業といえば教室で教員と学生が直接、面と向かって行うものでしたが、遠隔授業が普及したことで、これまで「授業」と言っていたものを「対面授業」と呼ぶことが多くなりました。

新しい事物が登場した結果、前からあったものの名前が変わるレトロニム(retronym)なのでしょう。携帯電話が普及し、従来の電話を「固定電話」と呼ぶようになったのと同じです。日本経済新聞で10年間の「対面授業」と「遠隔授業」の出現記事件数を調べたところ、どちらも2020年に突出して増えました。新型コロナの影響が強くあります。

報道によると、2021年度はオンラインから「対面授業」を中心に切り替える大学が増えるとありましたが、4月に4都府県で3回目の緊急事態宣言が出されると、「遠隔授業」に戻る動きが出てきました。感染を抑えるために必要な措置とはいえ、大学側も苦渋の決断をしたことと思います。医療従事者から始まったワクチン接種は、高齢者から一般向けにも広がりつつあります。今後、学生・大学の双方にとって良い状況に向かうことを望みます。

専修大学国際コミュニケーション学部で私が昨年度に担当した講義はすべて遠隔で行いました。大学の教室で講義をしたのですが、目の前の席には誰もおらず、31人の学生は自宅などから受講。講義する側のパソコンのカメラは「オン」にするのですが、学生は「オン」でも「オフ」でもいいということで、全員が「オフ」でした。画面越しの対面も実現することなく、初年度は終わってしまいました。

今年度も9月末から講義が始まります。今のところ「対面授業」の予定です。コロナが終息に向かい対面で行えることを願いつつ、少しでも良い講義になるよう準備を進めたいと思っています。

「【対面授業】たいめんじゅぎょう」の登場記事件数

*日本経済新聞の記事を調査。

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。金融機関に勤務後、1990年に校閲記者として日本経済新聞社に入社。長く作字・フォント業務に携わる。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書などに『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)、『加山雄三全仕事』(共著、ぴあ)、『函館オーシャンを追って』(長門出版社)がある。2018年9月から日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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