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第27回 【冷凍米飯】れいとうべいはん

筆者:
2021年11月29日

[意味]

急速冷凍した調理済みのコメで、電子レンジなどで加熱し食べるもの。冷凍食品のひとつ。

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家庭用冷凍米飯の販売が伸びています。昨今の新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅勤務や外出自粛が増えたことで、自宅で食事をとる動きが広がったのが影響しています。在宅勤務とはいえ3食とも自宅でとなると、調理時間を確保するのはなかなか困難。そんなとき、まとめ買いができ保管にも便利な冷凍食品は、欠かせない存在となるのでしょう。

全国小売店の販売データを集計する日経POS(販売時点情報管理)をもとにした冷凍米飯の販売金額ランキング(2020年4月~2021年3月)では、チャーハンと焼きおにぎりが上位を占めたとの報道がありました。ピラフを含めたこの3種が常に売れ筋のようです。時短ニーズの高まりを受け、皿に移し替えなくてもそのまま食べられるよう包装に工夫を凝らした商品などが増えています。

新聞記事データベース「日経テレコン」で、1990~2020年の日本経済新聞、日経産業新聞、日経MJ(流通新聞)の3紙に「冷凍米飯」が出現した記事件数をグラフにしたところ、1990年代前半と2000年代初めに大きな山ができました。記事を読むと2つの商品がキーワードになって出てきました。

前者は、「焼きおにぎり」の人気が高まった時期に当たります。それまで業務用を手掛けてきた日本水産が1989年9月、一般向け用の焼きおにぎりを発売。これが受験生の夜食やおつまみとしてヒットし、他社が追随するという動きが活発になったのでした。後者は、2000年に始まった「そばめし」ブーム。ニチロ(現マルハニチロ)が1999年に発売したそばめしは、焼きそばとチャーハンを混ぜ合わせた神戸名物。テレビ番組での紹介がきっかけで人気に火が付き、売れ過ぎて生産が需要に追い付かない状況となり、一時販売中止になったことがニュースにもなりました。

さて、2020年代前半。第3の山はグラフに現れてくるのでしょうか。ここ十数年、電子レンジを使わない生活を続けていますが、自宅で過ごす時間が増えたこともあり、そろそろ新しいものを買うべきときなのでしょうか。味付けやパッケージが進化した売れ筋の商品を試してみないと、社会の動きに取り残されるような気になってきます。

「【冷凍米飯】れいとうべいはん」の登場記事件数

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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。

筆者プロフィール

小林 肇 ( こばやし・はじめ)

日本経済新聞社 用語幹事・専修大学協力講座講師。金融機関に勤務後、1990年に校閲記者として日本経済新聞社に入社。長く作字・フォント業務に携わる。日経電子版コラム「ことばオンライン」、日経ビジネススクール オンライン講座「ビジネス文章力養成講座」などを担当。著書などに『マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典』(共著、三省堂)、『謎だらけの日本語』『日本語ふしぎ探検』(共著、日経プレミアシリーズ)、『文章と文体』(共著、朝倉書店)、『日本語大事典』(項目執筆、朝倉書店)、『大辞林 第四版』(編集協力、三省堂)、『加山雄三全仕事』(共著、ぴあ)、『函館オーシャンを追って』(長門出版社)がある。2018年9月から日本漢字能力検定協会ウェブサイト『漢字カフェ』で、コラム「新聞漢字あれこれ」を連載中。

編集部から

四字熟語と言えば、故事ことわざや格言の類で、日本語の中でも特別の存在感があります。ところが、それらの伝統的な四字熟語とは違って、気づかない四字熟語が盛んに使われています。本コラムでは、日々、新聞のことばを観察し続けている日本経済新聞社用語幹事で、『大辞林第四版』編集協力者の小林肇さんが、それらの四字熟語、いわば「新四字熟語」をつまみ上げ、解説してくれます。どうぞ、新四字熟語の世界をお楽しみください。

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