(前回からのつづき)
当日、さわや書店に青い新明解国語辞典を持って行きました。中身は赤も青も同じですが、全体的に「小林旭」という感じがしませんか? わたしは、する。乙に構えた感じが、いい感じ。で、「おつに」を引きました。
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はい、その通りです。何も問題ありません。ですが、「おつに」の隣りにきている見出しが、「おっぱい」。これ、かっくん、としませんか。せっかくの小林旭が、よりによって「おっぱい」です。あー、これは困ったお隣りさんだよ、と思って発見した新しい物件です。さわや書店のトークで朗読係をして下さった、男の店員さんも、
「乙に、の隣りが、おっぱい」
と、⼤変困惑なさっていたことは、今も忘れることが出来ません。
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「おつに・おっぱい」以外にも、この物件を調査しましたので、ご報告します。
「訪日・放尿」
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日本に来た外国の方が「(所構わず)小便をすること。」みたいで困ります。
「純朴・春本」
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せっかく「〔飾り気の無い意〕善意の人であり、△正直そう(利害打算の念など全く無いよう)に見える様子だ。」という隣りに、「男女の性行為のさまを(興味本位に)描写した本」が来てしまって、この後も純朴でしょうか?
「白蓮・莫連」
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「まっしろなハスの花。」を、「すれっからしの女性」が見ているのですね。
「浴場・欲情」
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普通の心で、お風呂に入って下さい。
「腹下(だ)り・パラグライダー」
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今日は、止めておいたらどうですか。
「検便・賢母」
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そりゃあ、賢母だって健康第一、検便もします。
「羽衣・破婚」
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せっかくいい物を出した後にこれだと、なんだか悲しくなりますね。羽衣は、鳥の羽で作ってあるそうです。何の鳥でしょうか。カラスの羽ではなさそうです。
「蚕糞・国葬」
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国家に功労のあった人に対し、国が主宰して行なう葬儀の隣りが、「カイコのくそ」でもいいですか。
「コケティッシュ・御家人」
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並んでいるだけで、むらむらとおかしい。さし絵を希望します。
「枯死・古寺」
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古いお寺の草木が全部枯れてしまったか?
「すかっと・スカトロジー」
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すかっとしたのは、良かったと思います。
「いばり・威張(り)返る」
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いくら雅語で言っても、それは「小便」ですから、威張りちらしてもだめな感じ。
「不人情・腑抜(け)」
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まるでだめ。
「盗作・盗撮」
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どっちもだめ。
と、いうことで、今後もこの物件を、発見していきたいと思います。
*
さわや物件 追記
「さわや物件」の原稿で、まだ「林家一平」は新解さんに出ていないけれど、「熊公八公」はある、と書きました。わたしの大阪の知り合いが、
「『熊公八公』の項を見て、名前に公をつけて『〇〇公』と呼ぶのは関東の方が一般的かも? と思いました。江戸時代のことはわかりませんが、昭和はそんな気がします」
と、感想を送ってくれました。
ああ、それはそうかもしれない、と思いました。忠犬ハチ公も、東京渋谷の物語です。
わたしは、上方落語の桂佐ん吉、笑福亭鉄瓶のお二人が好きで応援している。東京で落語会があると、出来るだけ行っています。上方だと確かに「熊公八公」ではないです。えーと、なんだろうと、思い出そうとしました。
考えていたら大阪からまたメールが来て、
「上方落語では『熊さん、八つぁん』ですね! 『熊やん』ということもあります」と、教えてくれました。
おお、熊やんでしたか。そうでした、そうでした。熊やんです。今はコロナで、大阪の演芸場にも行きにくい。コロナが落ち着いたら、熊やんや八つぁんに会いに大阪に行きたい。その時はマスク無しで笑えるといいです。
(今、またメールが来て『今も淀川の河川敷には「サドやん」と親しく呼ばれるホームレスがいます』とのことです。「やん」を付けて呼ばれるなんて、みんなに好かれているんだ、大事に思われているんだ、と思います)