今回は、7つの大分類のうち、「(4) 品詞別」と「(5) 構文別」について説明し、次回、最後の「(6) 数量表現別」と「(7) その他」について触れます。
(4) 品詞別
(5) 構文別
(4) 品詞別から
日頃、原書を読んだり、英和翻訳していたりすると、ほとんどすべての品詞において、学校英語とか辞書英語では考えられない意味や用法に出合うことがあります。ここでは品詞の中の「副詞」と「前置詞」について述べてみます。これこそ、辞書や参考書で勉強しても学習できるものではなく、収集した英文からでなくては体得できない用法です。
副詞の位置と用法
まず、次の英文を見てください。
This calculation is best done by a computer.
これを直訳すると
この計算は、コンピュータによってベストになされる
となります。しかしこのような日本語はありません。そこで
この計算は、コンピュータで行うのが一番良い
としてはじめて理解できるわけです。すなわち、best という副詞は形容詞(形容動詞)に変換しないと日本語にならないわけです。
まだこの技術翻訳の世界に入ったばかりのころ、この best という副詞に違和感を抱き、best はもちろんのこと、このように使われているその他の副詞、例えば favorably,presumably,safely,successfully などを徹底的に収集しました。そして、もう20数年前のことですが、やっとこの種の副詞の使い方を知りました。今では、この種の副詞の用法を駆使して英文が書けるようになりました。
前置詞 with の用法
次の例文を見ることから始めましょう。面白いのは with の用法です。
The new machine has been put on the market, with successful results.
この英文を、われわれ普通の日本人の感覚で訳すと、次のように1つの文になるでしょう。
この新しい機械は、よい結果を以ってして市場に出された
しかし実際にはそうではなく、彼らはこれを次のように2つの内容として書いているのです。
この新しい機械を市場に出したが、その結果は極めてよかった
これらの用法は、英文からでしか体得できない典型的な用法であり、この用法の with を使った英文をたくさん集め、この用法をマスターすると和文英訳の時に活用でき、ネイティブの発想にきわめて近い英文が書けるようになるはずです。ただし、例文を1つや2つ集めただけでは自分の血となり肉となるというわけにはいきません。やはり貪欲に集めることです。これが「トミイ方式」の真髄です。
(5) 構文別から
「モノ」や「ヒト」ではなく「コト」を主語に取る、日本語にはなく英語にだけ発達している「無生物主語構文」、文章の数ほど表現の数があるといわれる「比較構文」や「倍率構文」、ニュアンスを正しく伝えるための「強意構文」や「倒置構文」などたくさんある構文の中で、ここでは、ほとんどの日本人が間違える「否定倒置構文」と、「トミイ方式」のルーツとも言える「無生物主語構文」についてお話しし、いかに「トミイ方式」が素晴らしいものであるかについて理解していただきます。
「否定倒置構文」
まず、和英翻訳における「否定倒置構文」についてアプローチしてみましょう。
いかなる場合にも、この工具は使用してはいけません
という日本語を英語に訳す場合、ほとんどの日本人は
In any case, this tool should not be used.
In any case, do not use this tool.
などと訳します。しかし、簡単にいうと、ネイティブの書く英語は、まず do not の not を no に変換して any の場所に移します。そして、no を含む否定句が文頭にあるため、主節のほうは this tool と should を倒置させ
In no case should this tool be used.
と書きます。
このような発想ができるようになるには、学校英語とは完全に決別し、ネイティブの書く英語を片っ端から集め、いつでも使えるように分類・収納しておくことです。そしてその後にそれに馴れ、自分のものにしなければなりません。
「無生物主語構文」
その当時はそれが「無生物主語構文」だという感覚はありませんでしたが、私が最初に「無生物主語構文」らしきものに接したのは、まだ商社に勤めていた時です。ある日、アメリカのある会社から
Present schedule will bring me to Tokyo on February 27.
から始まる手紙がきました。意味は
現在の予定では、自分は2月27日に東京に行くつもりです
ということで別に難解な英語というわけではありません。ただ、その時全身に稲妻が走るほどのショックを受けたのは、その発想でした。日本人には決してできないその発想でした。この書き方がベストであるとか、ましてやこのように書かなければいけないなどとは決して思っていませんが、この発想の妙に驚かされたわけです。
これを境に、「これからは、参考書や辞書で英語を学習するのはやーめた。彼らの表現や発想を片っ端から収集し、使いやすように分類・収納しておくに限る」とあいなったわけです。まさに、日本人にとっては所詮「英作文は英借文に過ぎない」と達観し、35年前に「トミイ方式」の長い長い旅がスタートしたわけです。
「無生物主語構文」の収集を始めてから10年くらい経過したのち、すなわち今から25年ほど前、収集したすべての「無生物主語構文」を分類してみましたら、14の大きなパターンに分けられました。それをさらに分類すると約90個のパターンに分けられ、ある出版社から出版させていただいた本の中に取り込みました。
その後、三省堂から「技術英語構文辞典」を出版させていただいた時、もともと「無生物主語構文」というのは、因果関係の表現に使う構文でしたので、「無生物主語構文」と「因果構文」に分け、現在に至っています。
「無生物主語構文」については、該当するセクションでたっぷりとお話ししたいと思っています。