「Eagle Typewriter」は、ニューヨークのイーグル・タイプライター社が、1902年に発売したタイプライターです。発明者のポールソン(Carl Johan Pålsson)は、スウェーデンのカールスクルーナ在住だったのですが、「Eagle Typewriter」のアメリカ特許(U.S. Patent Nos. 703082 and 727552)ではニューヨークのブルックリン在住となっており、アメリカ風に「Charles J. Paulson」と名乗っていたようです。
「Eagle Typewriter」の特徴は、タイプ・シャトルと呼ばれる扇形の活字板にあります。タイプ・シャトルには28行×3列=84字の活字が、プラテンの方を向いて埋め込まれています。タイプ・シャトルの3列の活字のうち、下の列には「FIG」に対応する数字や記号が、真ん中の列には「CAP」に対応する英大文字が、上の列には英小文字が、それぞれ埋め込まれています。28個の各キーを押すと、タイプ・シャトルの対応する活字が紙の前へと回転移動し、紙の背面からハンマーが打ち込まれることで、紙の前面に印字がおこなわれるのです。通常は英小文字が印字されますが、キーボード左端の「CAP」を押すとタイプ・シャトルが上がって、英大文字が印字されるようになります。キーボード左上の「FIG」を押すとタイプ・シャトルがさらに上がって、数字や記号が印字されるようになります。
「Eagle Typewriter」のキーボードは、いわゆるQWERTY配列です。キーボード上段は、小文字側にqwertyuiopが、大文字側にQWERTYUIOPが、記号側に1234567890が並んでいます。キーボード中段は、小文字側にasdfghjklが、大文字側にASDFGHJKLが、記号側に)(@/$_#%-が並んでいます。キーボード下段は、小文字側にzxcvbnm,.が、大文字側にZXCVBNM&.が、記号側に£'"?!:;§.が並んでいます。ピリオドがダブっているため、28個のキーに82種類の文字が並んでいるのです。
「Eagle Typewriter」はタイプ・シャトルを印字機構に採用することで、部品の数を減らし、安価に製造することが可能となっていました。しかし、紙の背面からハンマーを打ち込むという印字機構は、印字品質が紙の厚さに左右されるため、ぶ厚い紙には全く印字できないという問題点がありました。結果として「Eagle Typewriter」は、ほとんど市場に出回らず、ほぼ幻のタイプライターとなったのです。