WISDOM in Depth

#21 コーパスで検証する (2)

筆者:
2008年3月18日

−語法注記: if A should [were to] do, . . . −

語法注記はコーパスを活用した研究成果を最も発揮しやすいところである。『ウィズダム英和辞典』では,そのようなコーパスを活用した研究成果ならではの情報には[コーパス]というレーベルをつけて表示している。ここには,従来からある説明をコーパスでより詳細に検証したものから,コーパスで検証中に遭遇した新たな発見に至るまで,いろいろなものが扱われている。今回は後者の例を紹介しよう。

if A should do . . . と if A were to do . . . は高校英語では必須の文法項目であるが,両者は「万一…すれば」のようにほぼ同じ意味で用いると説明されたり,上級者向けのやや詳しい解説では,were to の方が should より実現可能性が低い場合に用いられるといった説明が見られる。このことを検証しようと,if 節の中に were to が現れる用例と should が現れる用例を観察していると,興味深い現象に気づく。were to を含む if 節の帰結節では,would,might,could などの仮定法過去形が一般的であるのに対して,should を含む if 節の帰結節では,would,should,might をはじめ,be going to,will,命令文,法助動詞を含まない形などが現れることも少なくない。仮定法過去を使うより,当然これらの表現を使う方が確信度は高まる。

  • If something should happen, just call this number.
  • If something should happen to us, the Navy will at least have partial records of what happened.
  • If anything should happen, I’m going to be fine and everything’s going to be all right.
  • If anybody should be doing this, it’s you.

『ウィズダム英和辞典』(第2版)(s.v. if (接) 5a (類義)(3))では,こういった事情を配慮した説明となっている。

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筆者プロフィール

井上 永幸 ( いのうえ・ながゆき)

徳島大学総合科学部教授。
専門は英語学(現代英語の文法と語法),コーパス言語学,辞書学。
編纂に携わった辞書は『ジーニアス英和辞典初版』(大修館書店),『英語基本形容詞・副詞辞典』(研究社出版),『ニューセンチュリー和英辞典2版』(三省堂),『ジーニアス英和大辞典』(大修館書店)など多数。

編集部から

辞書の凝縮された記述の裏には,膨大な知見が隠れています。紙幅の関係で辞書には収めきれなかった情報を,WISDOM in Depth と題して,『ウィズダム英和辞典 第2版』の編者・編集委員の先生方にお書きいただきます(※2018年7月現在、ウィズダム英和辞典は第3版が刊行されております)。